2011年01月30日

哲学書評:仲正昌樹『ポストモダンの正義論「右翼/左翼」の衰退とこれから』



現代では、右翼も左翼も弱体化している。何故か。「社会はより良くなる」という「進歩」の理想が失われたからであるとする書。

例えば、マルクス主義は、ヘーゲルの歴史哲学同様、社会は発展的に未来に向かってよくなっていくとした。もし暗黒の未来が見えるならば、マルクス主義者が力をあわせて、世界同時革命を推進していけばよいわけである。マルクス主義者でなくとも、知識人、文化人たちは、社会の進化発展を信じていた。その理想も、冷戦崩壊後、完全についえる。

科学技術が発展すれば公害、環境破壊が起きる。マルクス主義者が計画経済を推進すれば、独裁政権ができて社会経済が破綻する。自由主義を推進すれば格差が拡大する。テロとの戦いを宣言すれば、罪なきイラク市民を誤爆で殺すことになる。21世紀の社会では、地球規模で完全に正義とされる思想が成立しなくなったのだ。

ではどうすればよいか。

著者は、自分の生きる現場で通用する「ミニマムな正義」を推奨する。そう言われ始めるのは、巻末最終部のみで、本の大半では、進歩史観、普遍的正義の理想が批判的に吟味されるわけだが、読後は、北欧的な福祉社会の理想は、正義として通用するのではないかと思えた(まあその北欧諸国も世界不況に直面して右傾化しているが)。

著者は、普遍的正義、進歩の理想を信じている人は、21世紀現在地球上にいないような書き方だが、少なくとも、インターネットの技術を推進しているギークたちは、自分たちの仕事を正義だと青臭く信じているだろう。すなわち、情報へのアクセス権を世界中の人に届けること、知的財産を世界中で共有できる情報のネットワークシステムを構築すること。ギークたちの使命感は、近代勃興期の啓蒙主義者のようだ。

ギークたちの理想もいつかやがて様々な問題を生み、批判的に脱構築されていくだろうが、少なくとも2011年の現在は、知的財産を無料で、世界中で共有していこうとするギークたちの理想の実現に、自分も貢献したいと思う。


posted by 野尻有希 at 18:39 | TrackBack(1) | 読書論(哲学・現代思想) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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