2011年06月10日

爆笑問題のニッポンの教養「女と男“仁義なき戦い”〜女性学・上野千鶴子」のまとめ〜ネット批判言説の解釈

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不惑のフェミニズム (岩波現代文庫)
上野 千鶴子
岩波書店 2011-05-18

結婚帝国 (河出文庫) 女は後半からがおもしろい 上野千鶴子に挑む 女ぎらい――ニッポンのミソジニー ひとりの午後に

by G-Tools , 2011/06/10



爆笑問題のニッポンの教養「女と男“仁義なき戦い”〜女性学・上野千鶴子」のまとめ。さて、日本一ケンカが強い学者と言われる上野千鶴子と太田が秋葉原のメイド喫茶で対決。

上野千鶴子が、メイドというかAKB48姿で登場。久本雅美そっくりと言われる。

<男はメイド喫茶に何を求めているのか?>
太田:メイドは処女っぽい。
上野:処女に見えたらいい。けがれていない方が安心できる?
太田:男は無垢なものも好き。自分自身の経験が少ない場合は、プロのお姉さんには臆してしまうから、メイドだと安心するんだろう。
上野:僕の居場所があるということ? メイド喫茶が女中喫茶になったらどうだろう? 戦前の帝大生の初体験1位は女中だった。いつでも自分を受け容れてくれる、自分を凌駕しない、おびやかさない相手は、気持ちいいということをカリカチュアしたのが、メイド喫茶だ。実際にはそのような世界はないから、バーチャルで実現されている。

太田:俺は巨根です。巨根というのは、男にとって重要なポイント。
上野:巨根を誇りたいのは、男相手でしょう。男は、女と関係なく、男の間で覇権争いをしたい。男が認めてもらいたいのは男。男は他の男たちと常に張り合っている。女は「本物の男」に華を添える存在に過ぎないのではないか。一番わかりやすい例がほりえもんの「女は金についてくる」という言葉。

上野:秋葉原で無差別殺傷事件があったでしょう。彼は、「自分にガールフレンドさえいえれば、こんなことやらずにすんだのに」とメールを書いていた。
太田:ネットにも理解者はいる。だからこそ、ネットに裏切られた時、傷つくのだと思う。
上野:太田さんは事件の加害者に同情的?
太田:同情的というより、彼に共感できる。僕は高校時代、女の子と話してみたいと思っていたけど、できなかった。何を自分の売りにすればいいのかわからなかった。
上野:彼がリアルな世界で女性との関係を求めていたら、別のことをやっていたはず。女の幻想を売る、分かりやすい女の子らしさを商品にする場所がたくさんある。
太田:・・・先生は何を言いたいのか?
上野:人と人との関係をちゃんと築いていくということ。
太田:人と人との関係に正解はないのでは? ネットも人と人との関係だ。
上野:ネットの世界にネカマがいる。名前を女にするだけで、反応が違うという。人と人は、まともな関係を結びたいはず。それを邪魔するものがたくさんある。その一つがジェンダー。女らしさ、男らしさに苦しんでいる人はたくさんいる。

上野:40年間見ていると、女は変わったなという感慨がある。男の変わり方が追いついていない。生身の女の子たちとちゃんとつきあってほしい。
田中:女の人は、ジャニーズ事務所だけ見ても、何も変わらないように思える。変わることが言い悪いは度外視して、僕は女の人が変わったという実感がない。

上野:今でもルールに縛られている人が多い。
太田:ルールを楽しんでいる人は多いだろう。縛られているとは何だ? 萌え萌えで楽しむ、そのルールで遊べば面白いじゃないか。
上野:苦しんでいる人がいる。
太田:苦しんでいる人はいつの時代にだっている。当たり前のことじゃないか。傷つけあって生きているんだ我々は。法律も何もとっぱらって、自由に生きましょうと言っているわけ?
上野:男女の関係は裸になれない。自分達を縛ってきたパフォーマンスルールがどれほど不自由なものか、だんだんわかってきた。たとえば、セクシャルハラスメントという言葉は、昔なかった。セクハラという言葉がない時代、セクハラをされても、女は耐えてきた。
太田:お笑いは、人と人の違いを笑うのが基本だ。人と人の間に違いがないと笑いにならない。
上野:笑っていい違いと、そうでない違いがある。
太田:全部笑っていい。違いを笑いにして、人を傷つけることもある。その時は未熟だと思う時もある。しかしそれを恐れていたら、交流できない。
上野:ちゃんと合意した上で交流すべき。
太田:合意なんてできない。何を持って合意とするのか?
上野:人間関係は男女に限らず、GOサインを出し合って交渉しながら進むもの。女の子を食事に誘って、「また今度ね」と言われて、ニュアンスをつかみながら、関係が進むものだ。
太田:「また今度ね」に脈があるのかないかなんて、男にはわからない。
上野:いろいろ経験を積んで学ぶだろう。だから男の人には、実際の女性と交際して欲しい。
太田:もう嫌だ。
上野:太田さんは実際の経験を通して色々学んだんでしょう。
太田:あんな経験はもうしなくていい。
上野:女性は自分の思い通りにならない。それをとことん味わった上で、それでも関係を持ちたいと言うのが、愛と言うんでしょう。

(所感)
太田&田中と、上野のバトルがヒートアップして、テレビ的に見ごたえのある回でした。人々の間で合意はできないとつっぱねる大田は、ウィトゲンシュタイン的、デリダ的。デリダがフェミニズム思想に対して一定の距離を保って懐疑を示したように、太田も上野に臨む。

メイド喫茶やAKB48なんて、旧来型のフェミニズムの観点からすると、女性差別でしかない。秋葉原の萌え文化もそう。しかし、女性たちの側も、メイドを言語ゲームとして楽しんでいる側面がある。いつもはネット文化に対してテレビ文化を擁護する太田が、「ネットも人と人との交流だ」と、ネット文化を擁護したのは新鮮だった。

上野はテレビやネットなど大衆文化全体に広まる常識のルールを疑う知識人の立場にある。こうした知識人的立場からの高踏的現代社会批判は、一部の限られた人でなく、大衆が発言する機会を持ったソーシャルメディアのネット時代では、あまり受けないだろう。

ネットの交流、バーチャルリアルの交流に頼っていては、実際の人と交際して学ぶより、成長がないという上野の批判も、ネット批判の文脈でよく見られるものだが、フェイスブックなどSNSの発展で、実社会の人脈とネットの文脈が相互に絡まり発展しあうようになった現代では、もう通用しない批判だと思える。

ただ、フェミニストたちが闘ってきたからこそ、セクハラが社会問題化、顕在化し、社会も企業もある程度は変わった。番組の終わりでは、愛という抽象概念に落ち着いたのか、落ち着かなかったのか。オタクはコミュニケーション不全だとよく批判されてきたけれど、最近はオタクがメジャーであり、ネットに接続していないレガシイな人たちよりも、たくさんコミュニケーションを交わしている。


posted by 野尻有希 at 00:11 | TrackBack(2) | TV論(ドキュメンタリー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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