2014年03月19日

橋部敦子脚本「僕のいた時間」第11話(最終回)の構成をハリウッド3幕構成法で分析〜三浦春馬の超絶長台詞も再現

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ノベライズ 僕のいた時間
橋部 敦子 (脚本) 木俣 冬 (ノベライズ)
扶桑社 2014-03-20

ドラマ 2014年 03月号 [雑誌] フジテレビ系ドラマ「僕のいた時間」オリジナルサウンドトラック TVガイドfuyu_DAN<冬男子2014> (TOKYO NEWS MOOK 401号) ACTOR'S FACE vol.3 (大型本) CanCam (キャンキャン) 2014年 04月号 [雑誌]

by G-Tools , 2014/03/19



フジテレビ水曜22時「僕のいた時間」(三浦春馬主演、橋部敦子脚本)第11話(最終回)の構成をハリウッド3幕構成法で分析します。各幕の中でのシーン小見出の表題(「オープニング」、「テーマの提示」など)は、ブレイク・スナイダー著「SAVE THE CATの法則」のビート・シートに従います。23分から37分頃まで、第2幕後半まるまる続く主人公の超絶長台詞も収録しています。


<第1幕(1〜10分)>
オープニング(1分)
拓人(三浦春馬)、車椅子から転倒、救急治療を受ける。

テーマの提示(1分)
拓人、死にたがっている。

セットアップ(2〜4分)
病室に恵(多部美華子)、拓人の父母、弟、水島守(風間俊介)、医師()が集まる。
拓人は人工呼吸器を付けた後、全く体を動かせなくなって、自分の心を周囲の人に伝えられなくなるが怖い。

きっかけ(5分)
拓人が家庭教師をしていた教え子のすみれが拓人の家に来る。
すみれ、ロボット型スーツを作るようなロボット研究者になるため、工学部に入りたいと言う。
今度中学校のイベントにゲストで来てほしいという。
すみれ「がんばっている先生見てると勇気わく。私だけじゃないと思う」

水島は自分の店を開きたいという。
水島「会社の愚痴ぐだぐだ言ってないで自分でやろうって。前はそんなこと考えもしなかった」
(拓人の友人たちは、拓人)
悩みのとき(6〜11分)
水島、拓人の腕に補助パーツをつける。
拓人、ノートに『目標』と書く。
続いて『今伝えられることを伝える』と書く。

第1ターニングポイント(10分)
拓人、すみれの学校に行ってみると言う。
主人公の生きる意志が回復したところで、オープニングタイトル&CMです。

<第2幕葛藤対立部1(11〜25分)>
サブプロット(12分)
弟の陸人(野村周平)職場で恐竜の話で盛り上がる。(前回もここのパートで弟の話題が出てきました)
兄に友達ができたと報告。

お楽しみ(13〜23分)
拓人、向井(斉藤工)に講演のビラを渡す。向井は講演に行くという。
向井「拓人、体大事にしろよ。お前一人の体じゃないんだからな」
ここでCMです。

CM明け18分。病院
恵「人工呼吸器のこと、どう考えているかわかりません」
19分、公園の木、花を見つめる拓人。
20分、拓人、中学校へ。惠の母(浅田美代子)、水島夫妻、向井、拓人の父母、陸人、観客席に。

ミッド・ポイント(21分) 
拓人、惠に車椅子を押されて檀上に。ここでCMです。


<第2幕葛藤対立部2(23〜38分)>
迫りくる悪い奴ら(23〜31分)
拓人「誰もが一度は考えたことがあると思います。自分は何のために生まれてきたんだろうって。病気になる前の僕は特にこれといったものもなく、漠然と毎日を過ごしていました。自分っていうものがなくて、家族にも本音を隠し、いつだってキャラクターを演じている自分のことが好きじゃありませんでした。大学4年の終りに同級生が自殺しました。理由はわかりませんが、彼は就職が決まっていませんでした。僕は大きな衝撃を受けましたが、死というものは他人事でした。僕の人生はまだまだ当たり前に続くと思っていたから。そんな僕が病気を告知されたのは、社会人1年目の時です。ALSという筋肉が衰えていく病気です。最初は左手に違和感を覚えました。ものがつかみにくいなって。次第に左腕に力が入らなくなり、左腕が上がらなくなり、左足が動かなくなりました。右手は、今もまだ少し動かせますが、腕はあまり上がらず、右足も動かせず、歩くことも立つこともできません。いつか、ものを飲み込んだり呼吸をすることもできなくなります。呼吸ができなくなったら死んでしまうので、人工呼吸器という呼吸を補助する機械が必要になります。人工呼吸器をつけたら、しゃべれなくなります。しゃべれなくても、顔や体のどこか一部を動かすことができれば、センサーでパソコンを打つことができ、自分の気持ちを伝えることができます。どこも筋肉を動かせなくなったら、自分の意志を伝えられないかもしれません。それで生きている実感を持てるのかわかりません。人工呼吸器は一度つけたら、外すことはできないのです・・・僕は、この病気になって、何度も覚悟をしてきました。病気を周りの人に話そうと決めた時、病気を受け入れて今を生きようと決めた時、左腕が全く使えなくなった時、歩けなくなった時、仕事ができなくなった時、僕はたくさんのものを病気に奪われてきました。奪われていくものに目を向けても怖いばかりで、今できることに目を向けるしかありませんでした。目標を見つけては失うことの繰り返しです。今は大学の医学部に入学するのが目標です。合格するのに何年かかるかわからないし、いつまで目指せるかもわかりませんが、僕が今医学部に入学したいという気持ちだけは、病気には奪えません。この先、全ての目標を奪われたとしても、僕が目標に向かって生きたという事実も奪われないのです。それに、病気から与えられたのは、苦しみや絶望だけじゃありません。僕は、人の温かさを知りました。家族と真正面から向き合えたり、わがままを言えるようになりました。愛情を信じられるようになりました。自分のことが、ちょっと好きになりました。自分が持っている幸せにも気づかせてくれました。こうやってしゃべれること、歩けること、走れること、食べられること、笑えること、触れ合えること、風を感じること、太陽の光に包まれること、今、生きていること。この世に生れて来たこと・・・」

全てを失って(31分)
先程からの長台詞の続き。ずっとしゃべってます。
拓人「僕は今、新たな覚悟をしなければならなくなりました。人工呼吸器をつけるかつけないか、死ぬのも怖いし、生きるのも怖い。死ぬ覚悟も、生きる覚悟も、簡単にはできません。周りの人は僕がただ生きてくれさえいれば、それでいいと言います。家族や大切な人のためだけに生き続けることができるんだろうか。自分の意志を伝えられないかもしれない状態で、生き続けることができるんだろうか。それは全くわかりません」

心の暗闇(32〜37分)
長台詞の続き。まだまだ続きます。
拓人「ただ一つ、わかっていることが、僕がどんな状態になっても、僕が愛と温もりに包まれているということです。(ここからBGM入る)家族、友人、先輩、主治医の先生、病院のスタッフの皆さん、介護スタッフの皆さん、そして、いつも僕の隣にいてくれる彼女。僕は、愛と温もりだけで生き続けることができるんだろうか。それだけで、僕は自分が生きている意味を感じることができるんだろうか。僕は何もできないどころか、生きているだけで手がかかります。排泄、入浴、食事、たんの吸引、それでも生きていていいんだろうか。そのことをずっと考えて来ました。僕が生きているだけで、周りの人達が生きがいを感じてくれるんじゃないか。僕が生きているだけで、生きる意味を社会に問いかけ続けることができるんじゃないか。じゃあ、生きているだけの状態で、僕が僕であり続けるにはどうしたらいいんだろうか。そうなった時に僕を支えてくれるのは、それまで生きた時間、僕のいた時間なんじゃないか・・・僕は覚悟を決めました。生きる覚悟です。(ここでBGM変化)いつかその時が来た時のために、今を全力で生きて行きたいと思います。今日はこのような場を与えて頂き、心から感謝します。皆さんにお会いし、新しい目標を見つけることができました。これからも今日のように自分の思いを伝えていけたらなって思います。今日は、どうもありがとうございました」
  会場から拍手。
(ハリウッド3幕構成通りの展開。第2幕後半まるまる主人公の長台詞でしたが、長台詞の中で主人公は絶望し(迫りくる悪い奴らパート)、死を意識し(全てを失ってパート)、心の奥深い暗闇の中で、天啓を得る(心の暗闇パート)。スナイダーの分析通りの展開でした)

第2ターニングポイント(38分)
拓人、ノートに書く。『コウエンリョウをいただいた。三千円。今も社会とつなっがている』
ここでお約束、CMです。

<第3幕解決部(40〜50分)>
フィナーレ(40〜50)
病院
拓人「人工呼吸器をつけることにしました」
先生「・・はい!」
拓人「よろしくお願いします」
先生「これから先、ALSとの付き合いは長くなります。自分の一部だと思って、一緒に生きていきましょう」
拓人「はい」
恵「はい」
41分から、発音PCの操作方法。
先生、外の桜を見て、「春ですねー」。

拓人、惠が創ったから揚げを食べる。
拓人のノート『さいごのカラアゲを食べた』

44分、拓人、また海に行きたいと言う。
メッセージボトル
拓人「新しいメッセージを書こう」
恵「うん。また、3年後の自分に?」
拓人「今度は、3年後のメグに」
恵「私は、3年後の拓人に」

拓人、何を書いたのか、絶対メグには内緒だと陸人に言う。
二人の書いたメッセージがボトルに入れられる。

46分、恵、海辺の砂浜にメッセージボトルを埋める。

47分、植物の成長で、月日の経過を表す。

48分、拓人、目の筋肉で日本語入力し、恵と会話。
陸人に彼女ができたと言う話題で盛り上がる。
拓人は「ALSとともに生きる」講演会を続けている。
拓人と陸人は結婚している。

49分、砂浜。メッセージボトルを掘り返す。
恵、メモを1枚開く。
恵「私のだ。拓人へ。私の隣にいてくれてありがとう、恵より」
  恵、拓人のメモを開く。
『メグへ。オレの隣にいてくれてありがとう。拓人より』とある。
恵「(笑って)一緒だ」

ファイナル・イメージ(50)
拓人によりそう恵。

(所感)
第2幕後半の長台詞がドラマ全体のクライマックス。第3幕は余韻といった感じ。


ハリウッド3幕構成法でいくと、

第1幕:主人公の臨死体験から始まる。周囲の人が自分の存在のおかげで力をもらっていることに気づく。

第2幕前半:その気づきの深まり。

第2幕後半:今までの連続ドラマの総まとめ。主人公の長台詞。23分から37分まで14分程度しゃべり続けて、絶望とそこからの復活を語る。

第3幕:人工呼吸器を受け入れて、ALSとともに生きる主人公。

視聴率的にはずっと話題をさらった『明日、ママがいない』に負けていたけど、ドラマクチコミサイトではファンからほぼ絶賛の嵐でした。

難病ものドラマに興味を持たない人は多いけれど、橋部敦子さんの脚本は、見る人の心を打ちます。難病以外の人間関係や悩みの描き方が絶妙。難病という設定、別にいらないんじゃないかと思えるほどに。また三浦春馬さんの演技が自然体というかリアル。人物を生きる演技。憑依的。橋部敦子&三浦春馬主人公でまたやってくれないかなと思える濃密な作品でした。

4月からフジ水曜22時は香取慎吾主演の科学捜査もの。テレ朝「科捜研の女」のフジテレビ版でしょうか。裏の日テレが「ごちそうさん」絶好調の杏主演ドラマなので、また視聴率的に苦戦しそうですが、ドラマ好きならW録画で見ましょう。
posted by 野尻有希 at 23:53 | TrackBack(0) | ドラマ論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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