2015年09月14日

中編小説「裸の電車と東京原子爆弾」(6)朝の赤坂見附

銀座線の車両が到着した。下半身裸の人が電車からおりてくる。

下半身裸の人のうち、ホームの向かい側に進んだ人は、丸ノ内線を待つ列に並びつつ、上着を脱ぎ出した。銀座線から丸ノ内線に乗り換える人もまた全裸になるのだ。

荻窪発池袋行きの丸ノ内線上り電車に銀座線の乗り換え客が登場するのは、赤坂見附からになる。下り電車には、赤坂見附で銀座線から乗り換えた客もいたはずだ。ただ下り電車は混雑しておらず、注意して見ていなかった。迂闊だった。

停車中の銀座線には、下半身裸と全裸の人が乗り込んでいく。乳首の青年が電車に乗る前に、車両は半裸と全裸の人で超満員になった。

ドアの端に立っていた少女がホームに落ちそうになった。彼女もまた全裸だったが、鞄、背丈、肌艶や発育状態から女子高生だろうと思われた。

駅員が全裸の女子高生を車両の中に押し込む。彼女の体が中年男性に密着した。男性は胸毛が剛毛だった。柱の陰からのぞいていても、彼の胸毛は剛毛だと識別できる。不幸にもそれほどの胸毛の持ち主だった。さらに輪をかけて不幸なことに、胸毛の彼は丸ノ内線から銀座線への乗り換え客、つまり全裸だった。

嫌がっているにもかかわらず、駅員は強引に女子高生の体を電車の中に押し込んだ。強く押しても、人の壁ができているから、少女の体は電車の中に収まりきらない。諦めた駅員は、今まで押していた彼女の腰のあたりをつかんで、ホームの外に引っ張った。

急に引っ張られて驚いた少女は転びそうになりながら、ホームにおり立った。

ドアの前に立つ胸毛の男の股間の様子については、沈黙せざるを得まい。あえてぼかして表現するなら、彼の股間には、千葉県浦安市にある世界的テーマパークのメインマスコットキャラの如きねずみの頭の形をした黒い物体が、長く太い鼻を勢いよく伸ばしていた。

駅員に押された後、引きはがされた女子高生をホームに残して、オレンジ色の銀座線は出発した。彼女は電車を待つ最前列に立った。彼女の後ろには、乳首の青年が全裸で立っている。下半身裸または全裸の人間の列が後ろに続いており、ホームの中央には、丸ノ内線を待つ上半身裸または全裸の列と重なる部分も生じていた。

私は銀座線に乗るのを辞めた。あのような電車に乗りたくはない。

急ぎ足で改札に向かう。上半身裸のまま歩いた。一刻も早く地下鉄のホームから外に出たかったのだ。(続く)

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眼球譚(初稿) (河出文庫)
ジョルジュ バタイユ Georges Bataille
河出書房新社 2003-05

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by G-Tools , 2015/09/14

posted by 野尻有希 at 01:07 | TrackBack(0) | 創作ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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