2016年03月29日

おそ松さんを中心に冬アニメとドラマをDistant Readingしてみる

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by G-Tools , 2016/03/29



冬アニメは「おそ松さん」が話題を独占していた。そういえば「ルパン三世」も放送していたし、「亜人」とか「昭和元禄落語心中」とか京アニのよくわからない新作とかいろいろあったけど、「おそ松さん」はネットを中心に盛り上がっていた。「魔法少女まどか☆マギカ」以来の社会現象化っぷりを見せた「おそ松さん」を中心に冬アニメとドラマをDistant Readingしてみる。

Distant Readingとは、最近欧米で盛り上がっているらしい文学研究の潮流。哲学はメイヤスーの思弁的実在論、人類学はカストロの多自然主義と、存在論的転回を迎えて盛り上がっているけど、文学はテクスト論とポストコロニアリズム以降盛り上がっていないとツイートしたら、いろいろリツイートされて、文学ではDistant Radingが流行っているらしいという情報を得た。Distant Readingは、日本ではまだ本格的に紹介されていない。自分なりにおおまかにつかんだDistant Readingとは、一つのテクストに密着せず、複数のテクストを領域横断的に、離れた視点で、一松のように読んでいくこと。間違っているかもしれない、というか多分誤解しまくっているDistant Readingを駆使して、「おそ松さん」とアニメとドラマを連結してみる。

「おそ松さん」のシリーズ構成は、松原秀という人。この人は、ナインティナインのオールナイトニッポンに投稿していた元ハガキ職人で、お笑いの構成作家をしつつ、「銀魂」の脚本も書いていた。「銀魂」の中でもかなりぶっ飛んだ回の脚本を書いていた人で、「おそ松さん」はいわば「銀魂」のお笑い要素過激化だった。

「おそ松さん」には、「銀魂」のシリアス回的な「大きな物語」がない。ニートの六つ子の駄目さ加減をとことん描く。「小さな物語」の6乗である。赤塚不二夫時代には個性のなかった六つ子に個性と人気声優が与えられる。六人が六人とも多種多様にだめだめ。社会からのはみ出しもので、ろくに仕事もしなくて、自意識ライジングしている。

「銀魂」のシリアス回は正直いらないと思っていたので、ただただ小さな物語を6乗する「おそ松さん」は心地よかった。最近テレビはシリアスな話が受けない。「亜人」はハイクオリティーで面白いけど、やっぱりシリアスな展開が続くと飽きてくる。主人公は何回も殺される。死んだ直後に生き返る。死と復活が短期間に繰り返されることによって生まれる強度の方が、シリアスな物語展開より面白かった。ストーリーを転がすより、もっと死の衝撃を連続させた方が、おそまつな感じになってよかったと思う。

日テレ土曜21時のドラマ「怪盗山猫」に話を変えよう。「怪盗山猫」は、視聴率最悪の今期の民放ドラマの中では、ドラマファンの間で評価が高かった。「怪盗山猫」にも「銀魂」、「おそ松さん」と同じ悪ノリがある。主人公達がひたすらだべっているシーンの方が、後半のシリアス展開より面白かった。シリアスな顔つきで「魂あるのかよ」とか絶叫しているシーン、最初のうちはまあいいけど、何回も見ると飽きるのである。

月曜21時の「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」、通称「いつ恋」はどうだったか。こちらも極度のシリアス展開で、月曜からこんな暗いドラマみたくないなんて言われた。とってつけたようなドラマチック展開は、なんかあざとい。他愛もないセリフの連続の方が面白かった。

「いつ恋」も、「怪盗山猫」も、「おそ松さん」的なくだらない、意味のない、惰性で進むシーンに魅力があっただろう。

ドラマから深夜アニメの話に戻ろう。「ハルチカ」は、ミステリーでおすのをやめて、先生と男の子とヒロインの同性愛含む三角関係メインにした方が面白かったと思う。「僕だけがいない街」は、何だか無理矢理ストーリーと謎を引きのばすのをやめて、リバイバルする興奮でおした方が面白かったと思う。「昭和元禄落語心中」は、石田彰、山寺宏一、林原めぐみというエヴァのカオルくん、加治さん、綾波レイの恋物語でおすよりは、毎回後半で必ず落語やってくれた方が面白かったと思う。

結局全部が全部「おそ松さん」的な意味のない物語を延々繰り返し、重たい話から逃げ続けた方が、消費されていたのではないだろうか。

では、重たい人生の物語からニートのように逃げ続けた六つ子は、最終回でどこにたどりついたのか。

最終回「おそまつさまでした」は、哲学的というか寓話的な物語展開だった。最終回のネタバレを含むジジェク的分析作業は、次回の記事に続く。
posted by 野尻有希 at 23:09 | TrackBack(0) | マンガ・アニメ論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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