2016年08月31日

展覧会レポ:横浜美術館メアリー・カサット展

メアリー・カサット ポストカード Mother and Child
メアリー・カサット ポストカード Mother and Child

先週の土曜日、横浜美術館のメアリー・カサット展にいってきた。台風到来間近で東京は雨。午前10時前に横浜に着いたら曇り空だった。本当はその週の水曜日行く予定だったけれど、『シン・ゴジラ』を見に行くために金曜日に延期。金曜日は小説教室の原稿締切日で時間が取れず、土曜になったのだった。

東急東横線のみなとみらい駅を出て、ショッピングモールを潜り抜けると、横浜美術館である。開館時間10時の時点で行列ができていた。友人から無料のチケットをもらっていたので、並ばずに進む。一般展示も見たくなったので、一般展示のチケットを買おうか迷う。チケット売り場は20人近く並んでいたので、まず特別展に向かう。カサット展のチケットを係の人に渡したら、一般展も見れますと言われた。

横浜に来た目的は、横浜そごうでやっているレンブラントのリ・クリエイト展を見ることだった。ネットで調べてみたら、横浜美術館でメアリー・カサット展をやっているとわかったので、そんなに興味がないけどいってみた。期待なしについでにいくと、いつも予想外の発見がある。展覧会の広告やネットで見たカサットの作品には感銘を受けなかったけれど、実物からは力を感じた。親の反対を押し切って、アメリカからパリに渡り、絵描きになったメアリー・カサット。絵を見ているうち、彼女は結婚していたのだろうかと気になった。鑑賞途中に未婚だとわかる。次は、愛人はいたのだろうかと気になる。

カサットは、フランスに着いた後、古典絵画の模写を続けた。絵は人から教わるものではない。古典絵画の模写が絵を教えてくれる、というようなカサットの言葉が展覧会の壁に掲げられていた。僕自身、小説の書き方は人から教わるものではないと思っていたので、共感した。

カサットは、ドガと出会ってから、印象派展に参加し始める。ドガとの出会いは、カサットの芸術家人生にとって大きなものだった。ドガは女性嫌いで有名で、近くに女性を寄せ付けなかったというが、カサットだけは親密に話していたという。お互いに芸術性を認め合い、刺激しあう二人。カサットは生涯未婚だったようだが、ドガとの間には愛があったと思った。

カサットは19世紀末のパリを生きる女性を描く。当時女流画家は珍しい存在だった。母と子を描いた絵の数々は、現代の聖母子像となり、カサットには注文が舞い込むようになる。

カサットは他の印象派の画家同様、日本の浮世絵の影響を受けた。展覧会では、カサットがコレクションした浮世絵も展示されていた。今まで浮世絵に興味がなかったけれど、葛飾北斎の絵を見て、すごいと初めて思った。滝が盛り上がって生き物のように見える。北斎の浮世絵は他の画家と異質で、オリジナリティーを感じた。

カサットは晩年、アメリカに戻り、絵画の普及に貢献した。芸術家として生きることが何より素晴らしいというようなカサットの言葉が壁にあった。生涯独身で、母と子を描き続けた彼女は、芸術作品を描き続けることで満ちたんだろう。

カサット展を出た後は、一般展示を見た。明治以降の日本の女性芸術家の作品がたくさん展示されていた。写真展のコーナーでは、近代アメリカの写真史を追体験できた。ネットで手軽に入手できるような上手な写真の撮り方的情報とは、違う角度で写真に触れることができた。写真史には興味がなかったけれど、本格的に歴史的変遷を学びたいと思った。

ミュージアムショップでは、カサットの絵ハガキを2枚買った。1893年の『家族』は、母、娘、赤ちゃんの3人の視線が三角形を描いている。ラファエロの聖母子像に学んだと言われる美しい構図だ。絵画は現実をただ切り取ればいいわけではない。構造を作る必要がある。

1880年の『眠たい子供を沐浴させる母親』。展覧会のポスターにも出ている絵画だ。ポスターで見た時は感銘を受けなかったけれど、作者であるカサットの生き様とか価値観を理解したら、絵葉書を買いたくなった。作者のバックグラウンドストーリーは芸術作品と無縁と考えるのが、純粋芸術論だ。でも作者のファンになれば、作品を欲しくなる。

『ようこそ浮世絵の世界へ』、『かわいい印象派』という本も衝動買いして、美術館を出た。まだ雨は降っていなかった。せっかく横浜に来たのだし、みなとみらいだし、赤レンガ倉庫まで歩いた。

公式サイト
http://cassatt2016.jp/index.html

メアリー・カサット展は、9月11日まで横浜美術館で開催されています。
posted by 野尻有希 at 23:42 | TrackBack(0) | 芸術論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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