2016年09月01日

展覧会レポ:横浜そごう美術館レンブラント リ・クリエイト展2016

1659年にこれを描いた


先週の土曜日、横浜美術館のメアリー・カサット展を見た後、そごう美術館のレンブラント リ・クリエイト展2016にいってきた。みなとみらい駅前にある横浜美術館を出た後、馬車道を通って赤レンガ倉庫にいった後、東横線で横浜駅まで戻る。駅前の地下街の立ち飲み屋で寿司とハイボールを楽しんだ後、横浜そごうに入った。

そごう美術館は、百貨店の6階にある。デジタル技術で復元された複製画が展示されている。芸術的価値は低いかもしれないが、自画像41点を含む約200点のレンブラント作品が、一つの展覧会で展示されることはありえない。時を経て色褪せた作品は当時の色に再現されているし、レンブラントファンとしてはお腹いっぱい楽しめた。

僕は画家の中では、フェルメール、レンブラント、カラヴァッジョ、モディリアニが好きだ。特にレンブラントは、晩年の老人を描いた作品が好きだ。しわがよって、哀愁漂う何とも言えない表情をしている老人たち。写真であの深い感じを再現するのは難しい。闇と笑いが同居している。

というわけで、前半は駆け足で見て、晩年の作品に向かおうとした。途中、『ダナエ』の前で足がとまった。裸の美女がベットで寝そべっている絵。他の巨匠も似たような絵を量産しているし、レンブラントの中では興味がない絵だった。目の前で見たら、肌の質感にひきこまれた。『ダナエ』の実物は、1985年に青年に硫酸をかけられて、完全に復元できないほど損傷した。リ・クリエイト展の『ダナエ』は、硫酸をかけられる前の本来のダナエを再現したものだという。僕がネットや画集で見た『ダナエ』とは、生々しさが違っていた。絵の中に裸の人間がいると思った。写真撮影可だったので、写真を撮った。

横浜そごうのレンブラントリクリエイト展にきた。ダナエの複製画。硫酸かけられる前の状態をリクリエイトしたもの。


アムステルダムの国立美術館から門外不出といわれるレンブラントの代表作『夜警』も想像と違った。教科書で見慣れた絵だったけど、でかかった。人物は等身大で描かれている。光の当たっている箇所と当たっていない箇所のコントラストが想像より強かった。あまりに背景が暗すぎるので『夜警』という通称がついたが、実は夜ではないらしい。初めて知った。この作品の評判が依頼主によくなくて、レンブラントは作品数が減少、貧乏になったと語られてきたが、最近の研究で、レンブラント作品数減少の原因は違うという説が打ち立てられた。当時のオランダは国民全体が経済的に窮乏しており、レンブラントもその中の一人に過ぎないという説である。

『夜警』の後は、41枚の自画像が飾られている部屋に入った。1年に1作ペースで自画像を描いている。自分が三十代後半だし、三十代後半以降の絵の変遷が興味深かった。どんどん絵が深くなっている。顔が太り、目に哀愁が宿り、しわが増える。ちょうどこの頃、没落の渦中である。経済的にも名声的にも没落していくのに、後世に生きる僕から見れば、絵はどんどんすごみを増している。他のどの作家とも違う影が刻まれている。レンブラント自身は、自分の思う芸術を貫いたのだろうか。私生活が廃れても、自分の作品の価値を信じ続けただろうか。

自画像の部屋を出る。晩年のレンブラントは、老人の肖像画が多くなる。しわが深い。依頼者は怒っただろう。若い家政婦の愛人、ヘンドリッキエ・ストッフェルドホテル・ヤーヘルの肖像画もあった。彼女は美人だけれど、微笑みながら同時に泣きそうな表情をしている。二面性、決定不可能性。愛人の存在を契機に、レンブラントの家庭はさらにぼろぼろになったといわれるが、残った絵は無敵だ。

愛人


展覧会を出る。200作のレンブラント。疲れた。他のお客さんも疲れたといっている。作品が多すぎて疲れたのか。レンブラントの世界が深すぎて疲れたのか。

ミュージアムショップでは絵葉書を買うつもりだったけれど、自分の好きな老人の肖像画はなかった。やはりあのような絵は、絵葉書にしても人気がないと判断されたんだろう。疲れた代償として、過去に何度かミュージアムショップで見かけたウォーターハウスの絵画集を買った。リ・クリエイト展の公式本も欲しいと思ったけれど、分厚かったし、もうリュックは本でいっぱいだったし、どうしても欲しいならアマゾンで注文しようと思い、東京に帰った。

アマゾンで検索しても、リ・クリエイト展の公式本は売っていなかった。他のレンブラントの画集で欲しいものはない。300円のキンドル向けデジタル画集なども売られていたけど、レンブラントの場合、本人の作でないと最近判定された作品が多い。リ・クリエイト展は、最新の研究成果をもとに選ばれた作品を展示していた。ますます展覧会の公式本が欲しくなった。

翌日の朝、我慢できなくて横浜に向かった。リ・クリエイト展の公式本を買って、すぐ東京に戻った。ネットで検索しても出てこない素晴らしい本があるとわかった。どういう小説を書いていけばいいか、どう生きていけばいいか迷ったら、レンブラントの本を開いて、深すぎる闇と皴に触れて、考え直そうと思う。


公式サイト
http://www.re-create.gallery/rembrandt2016sogomuseum/

レンブラント リ・クリエイト展は、9月4日まで横浜のそごう美術館で開催されています。
posted by 野尻有希 at 00:35 | TrackBack(0) | 芸術論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/441520349
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック