2016年10月03日

小説を書く立場からのキングオブコント2016感想〜ひとつのモチーフを変奏させる

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by G-Tools , 2016/10/03



TBSでキングオブコント2016が放送された。毎年キングオブコントの感想を書いているけれど、今年は小説を書く立場から見て、感じたことを書いてみる。

ファーストステージに出て来た10組は、小説の新人賞でいうと、最終選考に残った10組といえる。プロの小説家の最終選考審査員5人に見てもらえる。

3組目のかもめんたるまでは、会場も手探り感。4組目のかまいたちのネタ、受けていた。同じボケを繰り返す。何回も繰り返し、変奏することで、最初はそんな面白くないと思っていたボケが、そのうちツボにはまってくる。ボケもツッコミの仕方も次々変わる。短い小説では、ひとつのモチーフを最初に提示し、そのモチーフを多様に変奏して、展開していくと高評価になる。音楽でも同じだ。モチーフの繰り返しでテーマが明確になる。

5番手、ななまがりのコントはシュール。個人的には好きだけれど、こういうトーンの作品で、トップに立つのは難しそう。

6番手ジャングルポケット。去年のネタより格段に面白かった。トップに立つ。「うんち」というひとつのモチーフの変奏。うんちというモチーフを繰り返し、展開させて笑いにする。グローバルかつ価値観が多様な時代では、わかりやすい笑いが強い。複雑なネタよりも単純な一つのボケを展開させる方が強い。

7番手、だーりんずは外していた。

8番手、タイムマシーン3号、「お金が出る」というボケを何度も繰り返し、変奏させている。

9番手ジグザグジギー。「箸でハエをつかんで食べる」というボケを何度も繰り返す。これもまたひとつのモチーフの繰り返しなのだが、かまいたち、ジャングルポケット、タイムマシーン3号のコントに比べると、面白くない。何故だろう。原因を分析する必要がある。ただ単にひとつのモチーフを繰り返してもダメということか。

最後のライス。ノーマークだった。テレビ初出場。養成校時代は期待の新人だったけれど、10年以上活躍できず。見た目にモード感がないので、テレビ受けしないのだろう。だがしかし、ネタは抜群に面白かった。わがままをいう男が登場。「わがまま」という一つのモチーフを何度も何度も繰り返す。ジグザグジギーのモチーフの展開方法より格段に高技術。助けてくれよと懇願していた男が、女抱かせてくれよというし、巨乳が好きなんだよだというし、肩揉んでくれよ、こってんだよとまでいう。「わがまま」というモチーフをどこまでも発展させる。ジグザグジギーのモチーフの展開方法は、単調だったからつまらなく感じたと気づく。

ライスとジャングルポケットが同点1位でファーストステージ終了。上位5組によるファイナルステージへ。小説の最終選考会でいうと、5人の委員は、ライスとジャングルポケットの2組のどちらかに新人賞を獲らせたいと思っている状況。実力は拮抗している。どちらがとってもおかしくない。

ファイナルステージ1組目、かもめんたるは狂気のコント。観客がひいている。新人賞では独自性のある作品が評価されるが、賞を取るには、独自性だけではだめだ。

2組目。タイムマシーン3号。演劇の練習につきあう友人。友人は、お前絶対劇団経験あるだろうと思えるプロっぽい迫真の演技をする。観客のウケがいい。M1で見たタイムマシーン3号とは違う。ただ面白いだけでいいんだと気づいたと、VTRでコメントしていたけれど、その言葉通りのシンプルで力強い作品。しかし、視聴者の頭の中には、ジャングルポケットとライスがある。

3組目はかまいたち。狂気を描いたネタ。学校の教室。ある生徒の給食費が入った封筒が盗まれた。みんな目をつむれと先生がいう。犯人は黙って手をあげろといわれて、手をあげる少年。全員が顔を上げた後、彼は犯人のことを大変悪くいう。彼は女生徒の下着も盗んでいる。自分の罪を先生だけに打ち明けて、誇らしい表情でいる。先生を挑発する生徒。外国の短編小説のような展開。面白かったけれど、ジャングルポケットとライスの印象が残っている。

4番手はライス。レストランで、水をこぼした従業員に文句をいうチンピラ客。ズボンがびっしょり濡れていて、おしっこを漏らしたようになっている。こんなびっしょり濡れたらキレるだろうなと思っていたら、ズボンが濡れたのは、店員のせいではなかった。店員が床に水をこぼしたことに驚いて、チンピラはおしっこを漏らしてしまったのだ。

この隠し設定がわかっただけで、作品世界にどっぷり没入できた。お前のせいだと責め立てるチンピラ。私のせいだといえるでしょうかととぼける店員。設定の勝利。短編小説では、独創的な設定さえ決まればよい。あとは展開させるだけだ。おしっこをもらしたというひとつの事象から、次々とボケを変奏させていく。展開力の強さと速さが光る。ライス高得点で終える。

5番手はジャングルポケット。舞台は病院。医師から死を宣告される老人とその妻。あと何ヶ月で死ぬのかと思いきや、あと3分で死ぬという。ジャンポケもコント冒頭で設定をはっきりさせた。さあ、あとは「3分で死ぬ」というモチーフをいかに展開させるか。

モチーフの展開方法が、ライスよりも下手だった。最終審査でバナナナマン設楽がいったように、ジャングルポケットの1回目のネタよりも面白くなかった。テレビのコントとしてみれば面白いし、見せ場がたくさんある。ただ賞レースの最終選考で、ブラームスみたく完成度の高いモチーフの変奏を見せられた後だと、ふわふわした演奏だったなと思ってしまう。

結果発表。僅差でライスが優勝した。バナナマン設楽だけが点差をつけていたから、設楽のせいでジャンポケが負けたような第一印象だった。ただし、ライスよりジャンポケに高い点をつけていたのは、審査員5人のうち松本と大竹の2名だけだった。残りの3名はライスの方に高い得点をつけていたから、設楽の点数差が小さくても、ライスが優勝しただろう。

ジャングルポケットはテレビ出演が多い。ライスが優勝した方がよかった。

視聴後、ライスのようにモチーフを変奏させようと思った。いろいろ突拍子もないことをやらない。ひとつのモチーフを単調にならないように、多様に変奏する、力強く、現代生活にあった速度で。モチーフを繰り返し、多種多様に変奏することによって、作品の密度と強度が増す。
posted by 野尻有希 at 21:42 | TrackBack(0) | TV論(バラエティー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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