2016年11月01日

ゾルタクスゼイアンの卵子

私は自分の人生を選んでいる。意識的な選択はほんのわずか。ほとんどは無意識に選択している。受動的な選択の連鎖で、自分の人生ができている。そう意識する人間は受動的な人生を生きている。自由意志に基づく選択の連鎖で自分の人生ができていると思う人間は、自意識を過信している。

ゾルタクスゼイアンは卵を産む。鶏も卵を産む。人間は卵を食べる。人間は精子と卵子を結合させて、人間を作る。

何故人間は生きているのだろう。働くために生きているのだろうか。繁殖するために生きているのだろうか。ただ呼吸するために生きているのだろうか。自分の体を使って呼吸するだけで、情報交換が行われる。宇宙の本質は情報交換である。生命体は、情報を交換するために存在する。彼女と彼が愛し合うと、情報が交換される。国と国が戦争しても、情報は交換される。テロリストと軍隊が爆弾を交換しあうこともまた情報処理である。

ゾルタクスゼイアンは、地球上で行われる情報交換を観察している。我々人類もまた、生命を含めた物体が行う情報交換の様子を観察している。観察することによって、不確定な事象が確定する。シュレーディンガーの猫は、観察者に見られることによって、猫という物理的状態を確定する。ゾルタクスゼイアンとは何だろうか。人類なのか、人類とは違う知的生命体なのか架空の存在なのか。わからない。観察することによって確定する。ゾルタクスゼイアンを見ろ。見れば確定する。見ることと読むことは等しい。ゾルタクスゼイアンを読め。読めば確定する。

このテキストは小説です。実在とは関係ありません。

photo
幽霊たち (新潮文庫)
ポール・オースター Paul Auster
新潮社 1995-03-01

by G-Tools , 2016/11/01

posted by 野尻有希 at 23:36 | TrackBack(0) | 創作ノート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/443325027
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック