2016年08月30日

庵野秀明脚本・編集・総監督『シン・ゴジラ』MX4D上映感想2〜初期衝動、政治、二次創作臭、名言集、腐海の匂い

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ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ
カラー、東宝
グラウンドワークス 2016-09-20

シン・ゴジラ音楽集 別冊映画秘宝 特撮秘宝vol.4 (洋泉社MOOK 別冊映画秘宝) シン・ゴジラWalker S.H.モンスターアーツ シン・ゴジラ ゴジラ (2016) 約180mm PVC製 塗装済み可動フィギュア シン・ゴジラ【オリジナル・トートバッグ付き】 (e-MOOK) ゴジラ ムービーモンスターシリーズ ゴジラ2016(第二形態) 月刊MdN 2016年9月号(特集:キャラクターのリ・デザイン) ゴジラ ムービーモンスターシリーズ ゴジラ2016(第三形態) 激動の昭和史 沖縄決戦 [東宝DVD名作セレクション] 【映画パンフレット】 シン・ゴジラ SHIN GODZILLA 監督 庵野秀明 キャスト 長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ

by G-Tools , 2016/08/30



庵野監督の実写映画ときいて、正直全く期待していなかった。過去の『ラブ&ポップ』も『キューティーハニー』も、エヴァやナディアに比べれば、なんか無理してる感があった。『シン・ゴジラ』は違った。エヴァやナディアの第1話を見た時と同じ興奮があった。『アオイホノオ』で描かれたガイナックス初期と同じ熱を感じた。何故か。「ゴジラが好き」という初期衝動が、作中に溢れかえっていたからだと思う。

庵野秀明は脚本・編集・総監督という立場であり、監督は実写映画の実績がある樋口真嗣氏だったのも、成功の要因だったかもしれない。ただ樋口監督も『進撃の巨人』実写版の評判はよくなかった。『シン・ゴジラ』が特にクリエイター受けがいい原因は、製作陣が全盛時のガイナックスみたく初期衝動の熱気満々だったからと推測する。エヴァテレビ版の後半みたく、クリエイターが自意識の迷路に迷っていない。作りたいものを作っている。ハリウッドのゴジラはなんか違うと思った特撮愛に溢れたクリエイターたちが、エンタメの王道を更新した。(ここからネタバレあります。注意)続きを読む
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2016年08月29日

庵野秀明脚本・編集・総監督『シン・ゴジラ』MX4D上映感想〜リアリティーとオマージュとブランドの大量投入

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シン・ゴジラ音楽集
鷺巣詩郎
キングレコード 2016-07-29

ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ 別冊映画秘宝 特撮秘宝vol.4 (洋泉社MOOK 別冊映画秘宝) Shiro SAGISU outtakes from Evangelion 【映画パンフレット】 シン・ゴジラ SHIN GODZILLA 監督 庵野秀明 キャスト 長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ シン・ゴジラWalker 伊福部昭百年紀ベスト 大怪獣伝説~東宝特撮映画メインテーマ大全集~ ゴジラ ムービーモンスターシリーズ ゴジラ2016(第三形態) 映画「ゴジラ」(1954)全曲版~ライブ・シネマ形式完全劇伴全曲録音(仮) ミレニアムゴジラベスト/伊福部昭 東宝特撮映画傑作集

by G-Tools , 2016/08/29



ツイッターで盛り上がっていたので、六本木ヒルズのTOHOシネマズに『シン・ゴジラ』のMX4D上映を見に行った。本当は巨大ゴジラがいる新宿歌舞伎町で見たかったけれど、良い座席が取れなかったので、六本木にした。

MX4Dは、上映中に座席が動く。上映前の映画宣伝の時点で会場が湧いた。よくありそうなハリウッドのアクション映画の宣伝で座席が揺れる、水が飛び出す、煙が出る。動く度、若い女性の観客たちがはしゃぐ。『ミュータント・タートルズ』も、戦車の映画の宣伝でも座席が上下左右に振動しまくり、盛り上がった。割引なしだと3000円もしたが、テーマパークのアトラクションだと思うと楽しい。

『シン・ゴジラ』本編が始まる。最初は座席が動く都度みんなはしゃいでいたが、数分もすると笑わなくなった。作品世界に没入したのである。

脚本術の本では、リアリティーが大事とよくいわれる。リアリティーとは何か。『シン・ゴジラ』を見ると理解できる。(以下ネタバレありです)続きを読む
posted by 野尻有希 at 21:54 | TrackBack(0) | 映画論(国内) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月23日

映画「真夏の方程式」より印象的なシーンの脚本をリバースエンジニアリング

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真夏の方程式 Blu-rayスタンダード・エディション
ポニーキャニオン 2013-12-25

そして父になる Blu-rayスペシャル・エディション ガリレオXXダブルエックス 内海薫最後の事件 愚弄ぶ[Blu-ray] ガリレオII [Blu-ray-BOX] 容疑者Xの献身 ブルーレイディスク [Blu-ray] ガリレオφBlu-ray

by G-Tools , 2014/06/23



福山雅治主演、福田靖脚本「ガリレオ」シリーズの映画「真夏の方程式」より、印象的なシーンの脚本をリバースエンジニアリングしました。

○開発説明会及び討論会会場
  湯川(福山雅治)、遅れて到着後。成実(杏)が中川(神保悟志)に質問している。
成実「そもそも玻璃ヶ浦の全ての生物の遺伝子を調べるなんてできるんですか?」
中川「ですから、それはでき得る限りの手段を使ってですね」
成実「そんなできる限りなんて、そんないい加減なこと」
湯川「よくないな。そういう発言はよくない。専門家でさえ深海生物のことは完全に把握していない。できないことはできないと正直に言うべきです」
地元住民「そうよ」
湯川「地下資源を採鉱すれば生物には必ず被害が出ます。人間はそういうことを繰り返して文明を発達させてきました。だが、その恩恵はあなた達も受けてきたはずだ。後は、選択の問題です」続きを読む
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2013年12月10日

映画レビュー:麻生久美子、安田章大主演『ばしゃ馬さんとビッグマウス』



日曜日、渋谷のパルコパート3最上階の映画館、渋谷シネクイントに映画「ばしゃ馬さんとビッグマウス」を観に行ったので、その感想。

もともとシナリオ・センターの代表ブログでを読んで、『ばしゃ馬さんとビッグマウス』は、シナリオ・センター出身ライターが台本書いてますよと知る。続いてフェイスブック。中小企業診断士の知り合いが「『ばしゃ馬さんとビッグマウス」という映画に診断した商店街が出てきますよ」と言っていた。シナリオ・センターと中小企業診断士がつながったなと思った。

続いて大学のサークル友達の結婚式。数年ぶりに再会した後輩に「『ばしゃ馬さんとビッグマウス』見たんすけど、見ました? あれ脚本家の話ですよ」と言われる。最後はシナリオ・センター研修科ゼミ後の飲み会。ゼミ友が『ばしゃ馬さんとビッグマウス』を見て、まわりほとんどジャニーズファンなんだけど、一人でツボにはまって感動したと言っていた。ここまで重なったら観に行かねば、呼ばれていると思い、映画を観に行った。続きを読む
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2012年02月20日

コラム:野田総理が連日『ALWAYS三丁目の夕日』を好きだと語っている件について真剣に考えてみる

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バップ 2006-06-09

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by G-Tools , 2012/02/20



最近野田総理が、映画『ALWAYS三丁目の夕日』を何かある度に言及している。国会中継で『ALWAYS三丁目の夕日』が大好きですと公言し、NHKの21時のニュース出演時も、『ALWAYS三丁目の夕日』の頃のような中間層の分厚い社会にしたいと発言し、慶應大学で行われた大学生向けのシンポジウムでも、元TBSアナウンサー小島慶子との政府広報対談でも、『ALWAYS三丁目の夕日』に触れながら、税制改革論を語っている。

<ソース>
首相官邸HP
シンポジウム「社会保障と税の一体改革について」基調講演
http://www.kantei.go.jp/jp/noda/statement/201202/04kouen.html

政府広報オンライン
対談「社会保障と税の一体改革について〜よりよい明日へ、再び底力のある国へ」
http://www.gov-online.go.jp/topics/sz/sz_04.html

これだけ同じ映画の言及が続くと、政治的意図を感じる。誰か裏で情報をプロデュースしている秋元康みたいな策士がいるのだろう。ニュースの情報だけでは豊かさが欠けると思い、『ALWAYS三丁目の夕日』をデフレ象徴のゲオで100円レンタル視聴しつつ、上記ソース元の野田総理の発言を読んでみた。続きを読む
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2012年02月05日

おすすめ映画の紹介『きみに読む物語』(2004)

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ニコラス・スパークス
ハピネット 2006-10-27

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by G-Tools , 2012/02/05



ミスチルの桜井和寿さんが、NHK教育『佐野元春のザ・ソングライターズ』出演時、好きな映画としてあげていたのが、『きみに読む物語』。ずっと見たいと思っていたけれど、忙しくてなかなか見れなかった。一生懸命生き過ぎないようにしようと思ったら、時間と心の余裕ができたので、ようやく映画を見ることができた。

国語の試験でよく「作者が言いたかったことはなんですか?」という問題が出てくる。センター試験などマークシート方式の問題だと、答えは一つになる。作者が言いたかったことが一つなんてあり得ないという批判は、昔からある。小説は一つのメッセージを伝えるための道具ではないとか、読者一人一人作品から感じることは異なるとか。

作品は解釈される可能性に満ちている。大勢の読者が受取った意味が一つあるなら、それは「作者が言いたかったこと」かもしれないけれど、やはりその意味は多数決の結果でしかない。作者が言いたかったことと無関係に、作品から意味を引き出すことができるし、時代や人間のものの感じ方の変化によって、作品の受け止め方も変わってくる。

という前提をおいたとして、『君を読む物語』から僕が感じたことは、本当に人を愛することはすばらしいということ。こう書くとありきたりで、当たり前のメッセージだ。映画として丁寧に叙述されると、真剣に人を愛することの大切さが、身に迫って来る。続きを読む
タグ:映画
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2011年01月22日

映画批評:黒沢清監督『トウキョウソナタ』〜現代家族に関する考察

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メディアファクトリー 2009-04-24

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by G-Tools , 2011/01/22



蓮見重彦の立教ゼミ門下生の黒沢清監督作品。カンヌ国際映画祭「ある視点」部門・審査員賞受賞作。東京に暮らす核家族の物語。

父は大手メーカーの管理職だったが、リストラされてハローワーク通い、家族に解雇されたことを告げないまま、ショッピングモールの清掃員に転職。長男のタカシはアメリカの軍隊に入り、イラク戦争に派遣させる。次男のケンジはピアノ教室の先生に恋してピアノを習いたいというが、父にピアノ稽古を猛反対され、親に内緒でピアノ教室に通うようになる。母のメグミは崩壊途中の家族をつなぎとめるため、母親という役割を演じ続ける。続きを読む
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2010年01月24日

映画評:『デトロイト・メタル・シティ』自己実現欲求と市場の論理の葛藤



昨日フジで21時から放送されていたので視聴。ゴールデンタイムでも原作の持っているシモネタはあまりカットされず、逆にはらはらした。強烈なシモネタシーンの後に車に乗るどらえもんが出てくるCMが続く。TOYOTAのCMだった。この落差はなんだと思ったら、藤原紀香が乳房を露出する入浴剤のCMが続き、さらにはソフトバンクのスマップのCMが続く。大企業に肯定支援されるゴールデンタイムのエロシネマ。
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2009年05月17日

映画評:小津安二郎『東京物語』

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東京物語 [DVD]
笠智衆, 東山千栄子, 原節子, 杉村春子, 小津安二郎
Cosmo Contents 2007-08-20
おすすめ平均 star
starDVD商品として・・・・。
star冷めきった「ホーム・ドラマ」。
star小津監督の映画は数多いけれど
star最も愛する日本映画。普遍的な「日本人」の本質を鋭く切り取った傑作!
star半世紀前の日本人と日本

晩春 [DVD] COS-021 麦秋 [DVD] COS-022 お茶漬の味 [DVD] COS-023 父ありき [DVD] 戸田家の兄妹 [DVD] COS-017

by G-Tools , 2009/05/17



黒澤明と並び称される日本を代表する映画監督小津安二郎の代表作です。黒澤が動とすれば、小津は静。いつかみたいなと10年くらい前から思っていましたが、ずっと見ず。アマゾンから買った「ユリイカ」イーストウッド特集で、黒沢清が小津安二郎に言及していたので、それを縁に見ました。

小津映画では、笠智衆と原節子がすごいと聞いていましたが、見終わって確かにすごい。うまいかどうかよくわからないけど、二人の役とも存在が記憶に残りました。

広島尾道の実家から、笠智衆演じるじいさんとばあさんが、上京します。東京で家庭を営む子どもたちの様子を見るためです。夫の実家の両親を迎える妻の言葉づかいが、丁寧で、お互いを気遣う言葉のやりとりが、現代にみられないほど日本的マナーに溢れていて、まず驚き。しかし、子どもたちは自分のことしか考えておらず、礼儀知らずに振舞う。相手の立場を思うことができない子どもたちの様子をみて、現代人はみんなこの小学生みたいになってしまったのかもと思ったけれど、それは浅はかでした。

床屋で働く長女が、長男の家で上京した両親をもてなしますが、自分の家に帰ったら、夫に向けて「お父さんとお母さん早く帰らないかしら?」なんて両親への不満をぶちまけます。結局上京してきた両親は、忙しいみんなから相手にされず、実家に帰りますが、丁寧でマナー溢れる建前的コミュニケーションの裏の本音は、昔もわがままでどろどろかと思いました。

すごいのは原節子演じる未亡人。彼女が結婚した笠智衆の次男は、戦争に行って亡くなります。原節子は義理の娘なのに、上京したじいさんばあさんにとても優しく、聖人みたいに見えます。はりついた笑顔で、理想の女性を演じ続け、個人的不満をぶちまけない原節子が、現代からするとロボットみたいで不気味に見えます。

自分の家のことばかり考えて、お父さんお母さんを大事にしない長女のことも、「お姉様くらいになると、もうお父様やお母様とは別のお姉さんだけの生活ってものがあるのよ。お姉様だって、別に悪気があってあんなこと言ったんじゃないと思うわ。誰だってみんな、自分の生活が一番大事になってくるのよ」「みんなそうなってくるんじゃないかしら。だんだんそうなるのよ」「(私もそうは)なりたくないけれど、やっぱりそうなってくるのよ」「(世の中って)やなことばっかり」と笑顔で理解を示し、強く批判しません。

最後に笠智衆に再婚を勧められた時も、原節子は謙遜して模範解答を示し続けますが、最後になって、「私寂しいんです、ずるいんです」と、心に抱えていた内的苦悩をぶちまけます。原節子どうしたんだ!そんなに熱く語ってと思ったら、笠智衆が「えんじゃよそれで。やっぱりあんたはええ人じゃよ、正直で」といつものトーンで答えるのも異様。優しい言葉をかけられた後も泣く原節子に「自分が育てた子どもより、いわば他人のあんたの方が、よっぽどわしらにようしてくれた、いやあありがとう」と声をかける笠智衆。

マナー、親切、思いやり、本音と建前、エゴ、内的苦悩、戦争の傷跡。それらを考えるために。
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映画評:河瀬直美『萌の朱雀』

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萌の朱雀 [DVD]
國村 隼.尾野真千子.和泉幸子.柴田浩太郎.神村泰代.向平和文.山口沙弥加 他, 河瀬直美
バンダイビジュアル 2007-09-25
おすすめ平均 star
starわからない
starさらさらと流れる山奥の清流のような心の中の情景
star繊細にエロティック
star映像が先、物語はあと
star初心の映画

殯の森 [DVD] 沙羅双樹 デラックス版 [DVD] 河瀬直美ドキュメンタリー DVD-BOX 七夜待 [DVD] 長江哀歌 (ちょうこうエレジー) [DVD]

by G-Tools , 2009/05/17



カンヌ映画祭新人監督賞受賞作。『ダ・ヴィンチ・コード』を1時間くらいテレビで見た日の深夜に視聴。映像の雰囲気が他の映画、ドラマ、テレビ番組と違い、ゆっくり、落ち着いていて、吸い込まれました。開始15分目くらい、ピアノが奏でる音楽が、田舎の原風景に重なった時、この監督はすごいと思いました。1作目で、こんなすごい映像を撮るんだから天才だと思いました(もちろん第一作を撮影する前に何本も何本も撮っており、映画について千四時間以上、時間を注いでいるんだろうけど)。

ゴダールが、デジタルビデオカメラを持って映画を撮っても、それは映画にならないと言っていたけれど、その高飛車な断言を証明するためにあるような作品です。普通にカメラを持って撮影しても、映画にならない。何気なく毎日見ているテレビドラマ、ニュース、映画の映像なんて、ほとんど映画ではなくて、ただカメラを回しただけのもの。

畳の家、近所にスーパーもコンビ二も雑貨屋も何もなく、時々来る車が商品を配達してくる様子、通学にバスを使わないと、学校にも行けないほどの僻地。田舎。僕の父や母の実家とまるで同じ光景でした。父や母の実家がこの映画に描かれているのと同じくらい、猛烈に田舎なことに、今まで劣等感があったけれど、この映画を見たら、商店が一軒もない田舎こそ美しいんだと肯定されたように思えました。外国の映画で観てきた、都心部とはまるで異なる田舎のすばらしい雰囲気。日本にも、周りに商店が一軒もない村が、いまだに何個もあるということ。その肯定というか存在の再発見。
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2009年03月27日

映画評:伊坂幸太郎原作『アヒルと鴨のコインロッカー』

アヒルと鴨のコインロッカー [DVD]
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star騙されたー!
star原作の評価そのまま
starビックリして切なくなり過ぎて、言葉がありません

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冬休みで昼夜逆転、廃人化している最中、テレビ東京で深夜放送されていたので、視聴。夜の2時半過ぎから午前5時近くまでテレビで放送される映画を観る人は、一体どんな生活を送っているのだろうと、自分自身その一人なのに不思議がりながら、映画を観る。『アヒルと鴨のコインロッカー』は伊坂幸太郎の作品の中でもとりわけ好きな小説だ。映画化の話を聞いた時は、あんなポストモダンチックな構成の作品を実写映画化できるわけがないと思えた。しかし映画版は原作に忠実に作られており、仙台が映画化されていた。原作小説登場の「川崎」さんは、日本の小説に出てくるキャラクターの中で、個人的に一番好きな人物だ。川崎さんが友達だったらどんなに人生が楽しいだろうと思う。別に瑛太は嫌いじゃないけれど、瑛太が川崎さんだと、原作読書中のイメージとは違うと思えた。ただ、最後に松田龍平が川崎さん役で出てきた時は、そうそう川崎さんてこんなイメージと思えた。ああ、本当の川崎さんはこんな人だったんだと、小説の中に出てくる「僕」も感じただろう感情を、映画視聴中も感じることができて嬉しかった。

スコセッシの『ディパーテッド』を観た後に観た。ハリウッドの高額予算映画を観た後だったから、なんだか貧乏くさい日常の映画化に観えた。あまり芸能人スターぎらぎら感のない低予算風景の中、ペットショップの店長役で出てきた大塚寧々が、ものすごく美人に見えた。他の豪華芸能人に囲まれた、テレビドラマに映る大塚寧々は、ふつうの女性に見えるだろうけれど、きっと街中で彼女と偶然すれ違ったら、これくらい美人に見えるのだろうなと思えた。けれどまじまじとアップ画面を凝視していると、やっぱりそれほどでもないのではと思えてくる。松田龍平もそうだけれど、外見が格好いいから美しいのでなく、全身から出ている雰囲気と本人の意識がいいから、格好よく見えるのだろうと思えた。
posted by 野尻有希 at 23:47 | TrackBack(0) | 映画論(国内) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月24日

映画評:相米慎二監督『セーラー服と機関銃』

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セーラー服と機関銃 [DVD]
赤川次郎
角川映画 2008-10-24

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by G-Tools , 2009/03/24



この映画を観るに到った経緯を説明すると、押井守監督「スカイクロラ」視聴⇒「スカイクロラ」の作品テーマが、押井守監督の「うる星やつら2ビューティフルドリーマー」と同じだ思い、同作品をアマゾンで検索しました。⇒うる星やつら映画版1作目と同時公開された相米慎二監督「ションベン・ライダー」の自由な作りを観てぶっ飛んだ押井守が、俺もやるぞと気合を入れた結果、「うる星やつら2ビューティフルドリーマー」という前衛作品が生まれたという事実を、アマゾンを読んで知りました。⇒中野新橋のツタヤに行ったら「ションベン・ライダー」が予感通りレンタル中だったので、隣にあった相米慎二監督の代表作「セーラー服と機関銃」を借りた、という経緯です。

角川映画で、主演が人気アイドルで、赤川二郎原作で、セーラー服と機関銃って、映画と言えばゴダールかタルコフスキーだとスノビズム全開の僕からすれば、観る対象ではなかったのですが、よく観てみれば、それまでの政治の季節を機関銃で掃討し、80年代バブル感性の到来を告げる、パンクというかニューウェーブ作品です。映画が持つ攻撃力の高さに驚きました。某宮崎駿は言うに及ばず、アニメ、映画、ロック等日本の大衆娯楽作品分野には、全共闘に邁進して大企業に就職できなかったかつての革命の闘士が大量におり、娯楽作品ながら何かしらの前衛芸術性を持っている奇跡的サブカル作品が大量に生まれているという事実を、改めて確信しました。

ワンショット長回しの多様が、監督の特徴と言われます。同じカメラアングルで何分も台詞が続く場面あり、映画におけるカメラ位置の重要性を認識させられました。他の映画、テレビを見ている時は気づかないけれど、今後は小説を読むときも、事実を描写している語り手の視点、カメラの位置はどこにあるのか、注意しながら物語に触れることにします。どうでもいい話ですが、映画で観ると機関銃強そうですが、「バイオハザード5」の機関銃=マシンガンは弾を大量に消費するだけで使えないので、ショットガンの方が強くて便利なのにと想いました。
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2009年01月11日

映画評:DEATH NOTE デスノート the Last name

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DEATH NOTE デスノート the Last name [DVD]
大場つぐみ 小畑健 大石哲也
バップ 2007-03-14
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star松山ケンイチ
star評価が高い中悪いけど・・・
starみごとです。
starラストだけで充分意味がある
starさよなら、L

DEATH NOTE デスノート [DVD] L change the WorLd [通常版] [DVD] どろろ(通常版) [DVD] ザ・マジックアワー スタンダード・エディション [DVD] リアル鬼ごっこ スタンダード・エディション [DVD]

by G-Tools , 2009/01/11



マンガ版のファンとしては、ミサミサがなんかイメージと違う、エルも松山ケンイチじゃちょっと体格よすぎると思って、映画版を敬遠していました。それはミサミサ役の戸田恵梨香の魅力を知らなかった時の話で、ドラマ「流星の絆」を見て、戸田恵梨香ファンとなった今では、戸田恵梨香のことばかり注目して映画を見ることになりました。

戸田恵梨香の映画デビュー作です。ミサミサやってる彼女は、現在の彼女よりちょっと太ってるように見えます。「流星の絆」の方がやっぱり可愛くなってるななんて、そんなことばっかり考えながら見てました。

マンガの「デスノート」を読んでいる時は、「こんな殺伐としたきわどい話マンガにして大丈夫なんだろうか」とひやひやしていたけど、映画だと見ても、何の道徳的恐怖も感じませんでした。「デスノート」より恐ろしいテーマを扱った映画は、世界中にいくらでもあるからです。少年漫画雑誌で、しかも「ドラゴンボール」や「スラムダンク」を連載していたジャンプで、あのようなテーマの漫画が連載されたからこそ、マンガ版「デスノート」はやばいゾクゾク感があったんだなと思いました。
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2008年10月21日

映画評:宮藤官九郎脚本『木更津キャッツアイ日本シリーズ』

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木更津キャッツアイ 日本シリーズ
金子文紀
メディアファクトリー 2004-04-29

木更津キャッツアイ 5巻BOX 猫でもわかるキャッツアイ 木更津キャッツアイワールドシリーズ ナビゲートDVD 木更津キャッツアイ ワールドシリーズ さよならキャッツ★限定版 木更津キャッツアイワールドシリーズ 通常版 タイガー&ドラゴン「三枚起請の回」

by G-Tools , 2008/10/21



出演: 岡田准一, 櫻井翔, 岡田義徳, 佐藤隆太 内山理名, 内村光良 他
監督: 金子文紀
脚本: 宮藤官九郎

TBSドラマ『流星の絆』が東野圭吾の原作から遊離して、自由に開放的に振舞っているのを見て、そういうやり方でいいんだと、にわか宮藤官九郎ファンになり視聴。前からクドカンのドラマはちょこっと見ていたけれど、すげえと驚嘆し始めた途端に、何もかもが革新的に見えてくるから不思議。

やっさーい、もっさーいって踊りたくなったし、マックスコーヒーやビールを飲みたくなったし、ぶっさんたちと一緒に田舎で馬鹿をしたくなった。『流星の絆』を見ていた時も感じたけれど、若い男のエロさはすさまじいという描写が実にうまい。むっつりすけべではなく、とことんオープンマインドな、同じようにエロい馬鹿仲間みんなで集まって大騒ぎする性欲。やっさーい、もっさーい。
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2008年03月02日

映画評『それでもボクはやってない』周防正行

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それでもボクはやってない スタンダード・エディション
加瀬亮;瀬戸朝香;山本耕史;もたいまさこ;役所広司 周防正行
東宝 2007-08-10
おすすめ平均 star
star真逆の映画も観てほしい。
star誰もがこうなる可能性がある。
star特別お勧めできない映画
star怖すぎ
star現実、現実、そして現実。

バブルへGO!! タイムマシンはドラム式 スタンダード・エディション バベル スタンダードエディション ダイ・ハード4.0 (特別編/初回生産分限定特典ディスク付き・2枚組) どろろ(通常版) デジャヴ

by G-Tools , 2008/03/02



フジテレビの放送で視聴。裁判では客観的、合理的証拠を集めて判決を決める。個人の主観的な意見は、偏見や思いこみでゆがめれている可能性があるため、合理的に証明できる部分のみ判決に利用される。電車内の痴漢では証拠がなかなか集められない。やったと証明することは簡単だけれど、やっていないと証明することはきわめて難しくなる。痴漢の判決で裁判制度が抱える問題があぶりだされるんだけれど、それは近代的合理主義の問題をもあぶりだすことにもなる。

中国山奥の田舎に裁判官たちが自転車でまわるドキュメンタリー番組を以前見た。近代的設備がほとんどない僻地で、自転車でやってきた裁判官や弁護士が裁判を行う。司法制度を中国国内に広めるというのが目的。離婚の裁判をやっていたが、裁判が終わってから、離婚したいと言う妻としたくない夫が口論になった。夫はみんなが止める中妻を殴った。妻が泣いた。裁判官が出てきて裁判で決めるからと言った。もちろん日本の裁判所内でも、裁判が終わった後、関係者同士が殴りあいすることもあるだろうけれど、こうした様子を見ると、裁判では解決しないことがたくさんあるということがわかる。

近代的裁判制度を最初に確立していった人たちは、国家が司法制度を整えたら、世界に争いはなくなるだろうと希望を持っていたことだろう。近代勃興から何百年か経過して、近代国家なり裁判制度が整ってきたけれど、あいかわらず盗み、殺人、横領、性犯罪、殺人などが絶えない。

国家は暴力を集中させる装置だ。殺人は基本的に否定される。殺人がゆるされるのは国家権力だけだ。けれど、あいかわらず毎日毎日殺人事件は起きている。近代社会システムはまだまだ問題を抱えているけれど、私たちは社会を未来に向けて改善していくことができる。あきらめてはいけない。
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2008年02月19日

映画評:松本人志『大日本人』芸術表現における暴力と性の問題について

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大日本人 通常盤
神木隆之介 UA 板尾創路
アール・アンド・シー 2007-11-28
おすすめ平均 star
starせつなく、哀しい。
star■平成日本の「2001年宇宙の旅」かも。
starそこまでひどくなかった。
star観てよかった。
star映画を見ろよ

監督・ばんざい! <同時収録> 素晴らしき休日 舞妓Haaaan!!! トランスフォーマー スペシャル・コレクターズ・エディション バベル スタンダードエディション オーシャンズ13 特別版(2枚組)

by G-Tools , 2008/02/19



一般的には酷評が多いけれど、個人的には何でここまで酷評されるのと思うほど素晴らしい作品だと思えた。松ちゃんは北野たけしみたいにテレビと映画で作り方を変えない、自分はテレビの作り方で映画を作ると言っていた。作り方はコント風かもしれないが、扱っているテーマはもろ非商業的芸術映画の重さがあった。最後の暴力的展開は『ドッグヴィル』に似ていると思った。

サイゾーのレビューで「放送表現の自粛」について書いたけれど、ダウンタウンこそは大人たちから暴力的、性表現が過激とさんざん批判されてきたお笑い芸人の代表格である(ビートたけしもそうだったけど)。今後お笑い番組は暴力やシモネタをどう表現していくべきなのか、テレビ製作者たちはまだ見つけ出せていない。お笑い番組同様、現代小説やら映画も暴力表現、過激な性表現のオンパレードである。

ただ、優れた作家は、子どもの教育に悪影響を与えると教育者から批判されようが、暴力、性を描く必要性を認識している。現実の世界には暴力と性の問題が溢れかえっているからである。優れた文学、映画は暴力、愛のない性行為が生み出す悲劇を作品にして、多くの人に暴力、性の問題を考えるきっかけを与える。現実世界に暴力と性の問題が溢れかえっている限り、映画や小説やテレビには、それらの問題を告発する姿勢が必要だ。

『大日本人』のラスト、洋風の正義の味方スーパージャスティスが現れて、「ミドン」を丸めた新聞紙で殴りつける。スーパージャスティスたちはみんなでよってたかって無抵抗の「ミドン」の服を破り、パンツまで無理矢理破り去る。ちょうど沖縄で米軍海兵隊が少女に暴行したニュースの続報を昨日見ていたから、この場面を見ていて、現実に起きた事件とのリンクを感じた。

お笑い番組やテレビドラマが、子どもの教育上よくないとしても、暴力や性を表現する必要がある領域、それは社会風刺のブラックユーモアだ。お笑い番組で表現される暴力と子どもの暴力の関係は、因果関係であるよりも、相関関係である可能性の方が高い。現実には暴力がたくさんあるのだから、「ストップいじめ!」とか「暴力はいけないよ」とか、道徳教育番組的に、つまらないやり方で暴力の悪さを告発するのでなく、ブラックユーモアの強烈なやり方で批判したらいいだろう(よく考えると北野映画にも暴力がたくさん描かれているし、お笑いというかアートというか人間生活と暴力は切り離せない)。
posted by 野尻有希 at 13:00 | Comment(0) | TrackBack(1) | 映画論(国内) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月04日

映画評:『世界の中心で、愛をさけぶ』の長澤まさみが持つ初々しさ

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世界の中心で、愛をさけぶ スタンダード・エディション
大沢たかお 柴咲コウ 長澤まさみ
東宝 2004-12-23
おすすめ平均 star
starウケる理由はよく分かるが
star青春を切り抜いたファンタジー映画。
star映画館で思わず涙しました
star長澤まさみかわいいです!
star永遠のテーマ

いま、会いにゆきます スタンダード・エディション 涙そうそう スタンダード・エディション 「世界の中心で、愛をさけぶ」 朔太郎とアキの記憶の扉 黄泉がえり スタンダード・エディション NANA -ナナ- スタンダード・エディション

by G-Tools , 2008/01/04



原作も映画もキッチュっぽいから触れなかったんだけれど、先程テレビ放送されていたから、パソコンで作業しながら流しで見た。途中、初々しくてかわいい知らない女優が出ているなと思った。よくよく見てみたら、驚いたことに彼女は長澤まさみだった。地味な制服を着て、地味な髪型で、化粧も意識されないような純朴な顔立ち。痩せている。当然行定監督の演出によって成り立っているヒロイン像だろうけれど、今の長澤まさみには、あの感触は出せないなと思った。エプソンのCMに出たり、ドラマに出たり、ドラマの番宣でバラエティ番組に出て芸人と絡んだりした現在の長澤まさみには、芸能人の気配がまとわりついているから、この映画に見える一般人っぽい感覚、初々しさは出せないだろう。

『クローズアップ現代』の坂井和泉追悼特集で、坂井さんは芸能人っぽくなって普通の世界を描けなくなるのが嫌だったから、芸能界の表舞台には出ずに創作活動を続けたのでしたという解説があった。聞いた時は、別にテレビに出てもそんな変わらないだろうと思っていたけれど、この映画の長澤まさみと、今の長澤まさみを比べたら、「芸能界」のもたらす化学反応のどぎつさがよくわかった。

また、この映画の長澤まさみと、坂井和泉が持ち続けていた雰囲気は、非常によく似ていると想った。坂井和泉は駆け出し時期の女優だけが持つ、近くて遠いような夢見がちの雰囲気を、ずっと表現したかったのだろうか。
posted by 野尻有希 at 16:14 | Comment(1) | TrackBack(1) | 映画論(国内) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする