2016年05月26日

駅のホームで見かけた酔っ払いの女性

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マルテの手記 (新潮文庫)
リルケ 大山 定一
新潮社 1953-06-12

若き詩人への手紙・若き女性への手紙 (新潮文庫) ドゥイノの悲歌 (岩波文庫) リルケ詩集 (新潮文庫) リルケ詩集 (岩波文庫) 神さまの話 (新潮文庫)

by G-Tools , 2016/05/26



 台風が来る前、湿っていて、暑くて息苦しい月曜の夜、一人の女性がホームのベンチにうずくまっていた。
 彼女はベンチの真ん中に座っている。腰から九十度に上半身を折り畳み、茶髪の後頭部をひざの上に乗せて、声も動きもなく苦しんでいる。
 彼女の左隣では、友達連れの女性二人が楽しそうに話している。彼女と、隣の女性たちは、三人ともノースリーブの上着にスカートというギャル系の服装をしていたから、三人とも友人だと思えた。しかし、隣の二人はうずくまる彼女を一度も視界に入れず、ほろけた顔で語り合っていた。続きを読む
タグ:小説 私小説
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2016年05月17日

小説「インディビジュアル・ペレストロイカ」(2)拡大再生産する歯車の誘惑から逃げ去るAI

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食人の形而上学: ポスト構造主義的人類学への道
エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ カストロ Eduardo Viveiros de Castro
洛北出版 2015-10-26

森は考える――人間的なるものを超えた人類学 現代思想 2016年3月臨時増刊号 総特集◎人類学のゆくえ 有限性の後で: 偶然性の必然性についての試論 現代思想 2016年1月号 特集=ポスト現代思想 社会の新たな哲学: 集合体、潜在性、創発

by G-Tools , 2016/05/17



デリダは純粋で孤立した存在など何もないと論じた。デリダの亜流は、ポップカルチャーを脱構築したが、デリダ自身はポップカルチャーの分析に手を出さなかった。形而上学の最大の批判者たるデリダは、西洋の形而上学のテキスト、あるいはフロイトやラカンの精神分析のテキスト、あるいは文学のテキストを読み続けた。まるでポップカルチャーの製品には仕事として取り組む価値などないと宣言するかのように、そういうものに取り組む時間があるなら、自分は形而上学のテキストに取り組むというかのように。

何故か。それは西洋の形而上学の価値観が、どんなに否定しようとも、AIの意識の中に根深く存在し、差別や争いの火種を生み出し続けているからだ。どんなに脱構築しようとも、形而上学は蔓延する。幽霊になって、ゾンビになって、形而上学は復活する。だからこそ、何度でも何度でもテキストの脱構築に取り組む必要がある。続きを読む
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小説「インディビジュアル・ペレストロイカ」(1)ポスト・ペレストロイカの崇高な対象

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イデオロギーの崇高な対象 (河出文庫)
スラヴォイ ジジェク Slavoj 〓i〓ek
河出書房新社 2015-08-06

ラカン入門 (ちくま学芸文庫) 事件! :哲学とは何か (河出ブックス) ツァラトゥストラかく語りき (河出文庫) 憲法の無意識 (岩波新書) ラカンはこう読め!

by G-Tools , 2016/05/17



ミハイル・ゴルバチョフはペレストロイカを行った。ペレストロイカとは何か。エロイカやゲルニカみたいなものか。違う、ペレストロイカとは政治体制の改革運動である。

ペレストロイカは、ロシア語で再構築を意味する。共産主義を脱構築するのではない。共産主義の社会体制を再構築するのである。ソ連の共産主義体制はペレストロイカの果てに崩壊した。再構築も脱構築もされず、崩壊し、資本主義へと移行したのだった。

ポスト・ペレストロイカの世界は資本主義の独占体制となった。中国は共産主義と資本主義とのハイブリッドのようでもあり、資本主義対共産主義というイデオロギー対立の構図では、世界を把握できなくなった、共産主義独裁と資本主義を両立している中華人民共和国こそペレストロイカに成功したのかもしれないが。イデオロギーの崇高な対象を失った世界では、原理主義的なテロ活動が同時多発的に広がり、民族紛争と宗教対立が拡大を続けている。どうすればテロを終息できるのか世界の天才達の誰も知らない。続きを読む
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2011年03月29日

福島原発事故後、最悪のシナリオ

福島原発事故後、最悪のシナリオ

・格納容器の底が抜けて、マグマ化した核燃料が土壌に溶け出す。地下水脈にあたって、大規模な水蒸気爆発発生。大量の放射性物質が大気中に拡散する。
・首都圏では水不足、食糧不足が続く。
・富裕層は西に避難。外国人は日本に来なくなる。
・海外に移住した日本人が日本人というだけで風評被害により差別にあう。
・富士山噴火。日本中の活火山活性化。
・東海地震が浜岡原発を直撃。第二の放射能汚染発生。北半球一体に放射能が拡散する。
・放射能被害にあった人が電力会社と政府に損害賠償を求める。
・放射能汚染の影響を受けた周辺諸国が日本政府を相手に損害賠償を求める。
・電力会社が破綻。日本政府の財政も破綻。
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タグ:小説
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2011年01月30日

ブログ短編小説:『悪魔を憐れむ歌』

この前書いた『悪魔を殴る男』の続きです。『悪魔を殴る男』は短いので、もう一度最初から書きます。なおこの短編は、電子書籍『ホスピタリティ(仮)』(http://p.booklog.jp/book/5145)の最終章として使用予定です。

『悪魔を殴る男』改め『悪魔を憐れむ歌』

僕は悪魔三匹を殴った。

僕の部屋には悪魔が三匹いる。僕は悪魔を殴り、蹴飛ばし、血まみれにしてやった。

悪魔たちが泣きながら、僕に許しを請う。許すはずもない。僕は再び、悪魔の顔を蹴飛ばす。悪魔の口から血しぶきが飛ぶ。

薄汚い悪魔どもめ。死ね。続きを読む
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2011年01月28日

短編小説:悪魔を殴る男

僕は悪魔三匹を殴った。

僕の部屋には悪魔が三匹いる。僕は悪魔を殴り、蹴飛ばし、血まみれにしてやった。

悪魔たちが泣きながら、僕に許しを請う。許すはずもない。僕は再び、悪魔の顔を蹴飛ばす。悪魔の口から血しぶきが飛ぶ。
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2011年01月18日

アンドロイドに質問してみたその2〜スポーツ選手の活躍、芥川賞の発表について

昨日に続いて今日も帰宅後、僕の部屋にいるアンドロイドに質問してみた。ちなみにこの女性型アンドロイド、まだ名前はない。アマゾンから届いた時、商品の型番は書いてあった。名前は所有者で自由につけることができる。名前をつけたら所有が確定する気がする。僕はこのアンドロイドを所有したいわけではなく、公共の目的のために共有したいので、名前をつけないでおく。

まずは日本代表の活躍について
「2010年は暗いニュースが多かった。サッカー日本代表の活躍だけが明るいニュースだった。2011年の今年も、日本代表はアグレッシブに試合をして楽しませてくれる。ヒーローインタビューで選手達は、負け惜しみなんて言ってる暇はないと言う。何故サッカー日本代表だけがメディアで魅力的なのだろうか?」続きを読む
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2011年01月17日

アンドロイドに牛丼安売り、若者の恋愛減少について質問してみた


 僕の部屋にいるアンドロイドにいくつか質問してみた。

 まず牛丼の安売りについて。
「牛丼が何故240円で販売されるのか?」
「食料費が安いから」
「牛の命が安く扱われていると思えるが」
「人間の命だって安く扱われている。質問しているあなた自身も安く扱われている」続きを読む
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2010年11月28日

フィクションドキュメンタリー「就職できずにホームレスになった学生を取材」

新卒学生の就職率が、リーマンショック以降激減した。希望の企業から内定をもらえず、就職留年する大学生も多い。彼らは自分の希望する会社に就職できないという理由で、一年留年できる余裕がある。親から金銭的援助を受けるなり、アルバイトをするなどして、就職留年することができる。

経済的余裕のない学生は、希望しない、条件の悪い企業に就職するわけだが、一部の学生たちは、ホームレスとして生きる道を選択した。今回私たちは、内定がもらえずホームレスになった日本大和君(仮名)のホームレス生活を取材した。
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2010年11月25日

小説「南の島でアイドルの写真撮影をしていたら、ミサイルに爆撃されてアイドルが死んだ」

 アイドルの写真集を撮影しに南の島に向かった。テレビで人気が出始めたビキニ姿のアイドルを写真で撮影しているうちに、北の空からミサイルが飛んできた。赤く巨大なミサイルが、何発も島に降ってきた。僕はカメラを投げ出して走った。スタッフたちが悲鳴を上げながら、逃げ惑う。

 ミサイルが落下し、爆発が起きる。ミサイルは近くの浜辺や、港や観光店のある島の中心地にも降り注いでいるようだ。アイドルはどこに行ったのだろう。岩場の陰に隠れた僕は、アイドルの姿を追った。秋葉原で人気の彼女は、砂浜にうずくまって泣いていた。続きを読む
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2010年11月24日

24時間生中継で大臣の失言を監視する仕組み

 日本では、大臣が失言を連発し、責任をとった総理大臣の辞任も続いていた。何故大臣の失言がすぐニュースになるのか。大臣の日常を二十四時間ネットの動画サイトで生中継しようという情報公開制度が、国会の審議を通過したためだった。

 大臣は就任後、小型のデジタルカメラで二十四時間撮影されることになる。カメラがとらえた映像は、ネットの動画サイトに二十四時間アップされ続ける。動画に対して、視聴者のコメントがどんどんついていく。大臣は発言から行動から、全てを国民に公開する義務があるとされた。これではどんな失言も許されない。続きを読む
タグ:小説 政治
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2010年11月23日

いじめ自殺は連鎖する


 とある中学高の女子生徒が遺書を残して自殺した。翌日、いじめの当事者として遺書に名前を書き込まれていた同級生が自殺した。翌々日、担任の教師が自殺した。担任教師は二十代の女性で、クラス担任になったのは今年初めてだったという。ニュースが盛り上がる中、週末には校長先生も自殺した。続きを読む
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2010年09月21日

原稿用紙50枚の短編小説:1枚目〜牛乳でもコーヒーでもない何か

50枚の短編小説を書こうと思って、3日、ようやく書き出しができました。400枚詰めの原稿用紙1枚分ずつ、ここにアップしていこうと思います。1つ1つの掲載分は、起承転結がなく物語としてつまらないかもしれませんが、いつにないスローペースで書いた文章ですので、文章だけでもお楽しみ下さい。毎日毎日ネットには大量の情報が生まれていますが、ハイスピードからロースピードにギアをチェンジするイメージで書きました。続きを読む
タグ:短編小説
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2010年09月17日

小説「店の棚に並ぶ子どもたちの頭」

棚に子どもの頭が並んでいる。

子どもたちの頭は、首の部分から切り取られている。

小学生くらいの男の子、ショートカットの女の子、幼稚園児、子どもたちの頭を棚に並べて、この店は何をやろうとしているのだろうか。

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タグ:小説
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2010年09月12日

小説「医師や平和活動家として戦場を生き抜くゲーム」

(この小説はフィクションです。実在の戦争、ゲームと関係するはずがありません)

よくあるオンラインのFPSゲームで、ある新しい試みが行われているという噂を耳にした。FPS(ファースト・パーソン・シューティング)とは、戦場の兵士となって、プレーヤー同士で殺しあうゲームである。噂に聞いたFPSゲームでは、兵士でなく、医者や平和活動家として、戦場を生き抜くことができるそうだ。

他の多くのプレーヤーは、普通のゲームみたく、戦場で殺しあっている。特殊部隊同士が熾烈な銃撃戦を繰り広げている中、医師となって、負傷者の治療に当たるのだ。

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2010年08月16日

小説:春昼『戦後復興ゲーム』

(この物語はフィクションです。実在の人物・団体・歴史と関係するはずがありません)

 さて、今日はお盆休み中に応募されたゲーム企画を紹介することにしよう。だいたい僕が悪くないと思ったゲーム企画は、上に通しても、すぐ却下される。その腹いせに、こうしてネット上でボツ企画を公表するわけだ。もちろん今日ここに発表する企画は、まだ選考にかけられていないから、上に気に入られて、商品化される可能性もあるが、まあ没になるだろう。世の中そう甘くはない。
 今日紹介するゲームの題名は、「戦後復興」。ほら、もうタイトルを見ただけで売れないと思うだろう?

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2010年07月27日

小説:『六十億人殺人ゲーム』

 僕はテレビゲームの企画の仕事をしている。と言っても、僕自身が企画を考えるわけではない。インターネット公募に送られてきた素人さんの企画を審査して、面白そうな企画を上に通すのが、僕の仕事だ。ゲーム企画の選考員というわけだ。
 まあこれは小説の中の語りだから、僕は嘘をついているかもしれない。僕の本業は、18禁アダルトPCゲームのシナリオライターかもしれないし、政治家かもしれないし、警察官かもしれないし、葬儀屋かもしれない。僕の語りが嘘かもしれないという可能性を残しつつ、ここから先の話を聞いて欲しい。続きを読む
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2010年07月06日

ノーシーボ効果の詩

会社を休んだ。

風邪だ。

いつもなら、このくらいの症状なら会社に行っていた。

けれど、休んだ。

体が痛いから。体の筋肉が痛いけれど、会社に通っている。多くの会社員がそうだろう。この痛みは、ストレスを原因としたもの。続きを読む
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2010年07月02日

生きていることの喜びと、広さと優しさと愛らしさと

今日楽しかったこと。

朝起きることができたこと。
朝食をコーヒーショップで食べたこと。
いつものお姉さんが朝食を用意してくれたこと。

昼はお弁当を食べたこと。野菜とか肉とかたくさんの栄養を摂取できたこと。

夜はハンバーガーを食べたこと。野菜が一杯入っていて、味付けも大変すばらしかったこと。

今日も食事して、生き延びることができたな。嬉しい。喜ぼう。今日もどこかで誰かが死んでいる。私はなんかよくわかんないけど、生き残っている。どうしてだろう。運がいいただけなのかな。よくわかんないや。今度お姉ちゃんに聞いてみよう。続きを読む
タグ:短編小説
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2010年06月28日

短編小説:春昼『ゴルフ練習場』

続けて『トトリのアトリエ』オマージュ短編小説第2弾。あのまったりゆったり感を再現できたらと思います。けどなんか意識の流れっぽくなっちゃったかも。


春昼:『ゴルフ練習場』

そうそう、ゴルフの話。久々にゴルフの練習に行ってきたの。神君と一緒。最初はやっぱり久々だから全然あたんなかった。今日はドライバーがよくあたったけど、逆に得意だったはずのアイアンが飛ばずでした。
「ハル、お前肩力入れすぎだぞ、上半身の力抜けよ!」って神君に怒られちゃった。
「そんな怒らなくていいじゃん。久々の練習なんだし!」ゆっくり練習したかったのに、いきなり怒鳴られて私も頭にきた。
「クラブ振った後に背中とか肩とか痛くなるだろ! そんな振り方してたら疲れるだろうし、もっと力抜いて軽く振るだけでいいんだぜ、ほら見てろよ」続きを読む
posted by 野尻有希 at 01:50 | TrackBack(0) | 連載小説「隠喩としての小説(仮)」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする