2012年12月19日

NHK教育『100分de名著』サン=テグジュペリ『星の王子さま』第3回「本当の絆の作り方」のまとめ

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星の王子さま (新潮文庫)
サン=テグジュペリ Antoine de Saint‐Exup´ery
新潮社 2006-03

人間の土地 (新潮文庫) 夜間飛行 (新潮文庫) サン=テグジュペリ『星の王子さま』 2012年12月 (100分 de 名著) 星の王子さま (集英社文庫) 星の王子さま - The Little Prince【講談社英語文庫】

by G-Tools , 2012/12/19



NHK教育『100分de名著』サン=テグジュペリ『星の王子さま』第3回「本当の絆の作り方」のまとめ

<前回までのまとめ>
・歳を経るほどに知らず知らずのうちに、心は邪悪なものにむしばまれていく。常に心を手入れすることが必要と作者は説いた。
・大人の心と子どもの心のバランスを取ることが大切。大人の心は客観的、知識と経験がある。子どもの心は主観的、無知で無邪気。マグマのような子どもの心を大人の心で包んで守ると、バランスが取れる。
・美しい外見よりも、見えないもの、そのものの内面を見つめる。
・大人になると、子どもの頃から憧れていた本当に欲しいものではなく、何か勘違いした別のものを追いかけてしまいやすい。続きを読む
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2012年09月26日

NHK教育『100分de名著』チェーホフ“かもめ”第4回(最終回)「人生は悲劇か 喜劇か」より印象的な言葉のまとめ

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チェーホフ『かもめ』 2012年9月 (100分 de 名著)
沼野 充義
NHK出版 2012-08-25

かもめ (集英社文庫) 鴨長明『方丈記』 2012年10月 (100分 de 名著) カフカ『変身』 2012年5月 (100分 de 名著) パスカル『パンセ』 2012年6月 (100分 de 名著) ニーチェ『ツァラトゥストラ』 2011年8月 (100分 de 名著)

by G-Tools , 2012/09/26



NHK教育『100分de名著』チェーホフ“かもめ”第4回(最終回)「人生は悲劇か 喜劇か」より印象的な言葉のまとめ。

<チェーホフの演劇『かもめ』は、喜劇なのか悲劇なのか。『かもめ』の初演は徹底的な悲劇として演出されたが、チェーホフは不快感を示したという>
柄本明:『かもめ』は、何かをするはめになっちゃう人たちの話。チェーホフは、人間を愚かに見ているというより、生きているのって暗いことだなって、そんな感じ。面白い。チェーホフは何か変。
沼野充義:チェーホフは結論が出ないまま終わる。その後のことは、みんなで考えてくださいとなる。芝居をやって、一つの結論が出ること自体おかしいのではないか。
柄本:宙ぶらりんにさせられる。

柄本:チェーホフには悪意を感じる。我々には、悪意がある。誰かをだまそうとする。いいものをやらなければいけないと追い詰められている時、悪意は、人間をクールダウンさせる。
沼野:『かもめ』は喜劇なのか悲劇なのか。何十年も『かもめ』に関わってきたけれど、私はわからない。続きを読む
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2012年08月22日

芥川賞受賞作・鹿島田真希『冥土めぐり』ブックレビュー対談

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冥土めぐり
鹿島田 真希
河出書房新社 2012-07-07

鍵のない夢を見る 東京プリズン 六〇〇〇度の愛 女の庭 新月譚

by G-Tools , 2012/08/21



芥川賞受賞の話題作、鹿島田真希『冥土めぐり』。「わたし」と妖精さんの対談形式でブックレビューをお送りします。人類は衰退しましたし。

わたし:妖精さん、今日は芥川賞受賞作『冥土めぐり』についてお話ししますよ。
妖精さん:芥川賞って何ですか?
わたし:まさかそこから!? 芥川賞は、純文学の新人(といってもプロですが)に与えられる文学賞で、だいたい短編か中編小説に与えられます。安部公房、大江健三郎、石原慎太郎、村上龍、綿矢りさなどの受賞が有名ですね。村上春樹は選考委員に理解されなくて受賞してませんけど。
妖精さん:『冥土めぐり』ってどんなお話?
わたし:そうですね。簡単に言うと、母親と弟とあんまりうまくいってない語り手の奈津子が、脳に障害を持つ夫の太一と、かつては豪華、今は落ちぶれたホテルに旅するお話です。ロシア文学的と言われています。
妖精さん:ロシア文学的って何ですか?続きを読む
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2012年02月03日

書評:フランクル『夜と霧』〜ヒューマニズムから多様な価値の共存へ

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夜と霧 新版
ヴィクトール・E・フランクル 池田 香代子
みすず書房 2002-11-06

夜と霧―ドイツ強制収容所の体験記録 それでも人生にイエスと言う 夜と霧 [DVD] フランクル心理学入門―どんな時も人生には意味がある 「生きる意味」を求めて (フランクル・コレクション)

by G-Tools , 2012/02/03



アウシュビッツの話は何度も聞いているし、色んな本でも出てくるから、読まなくてもいいかなと思っていたけれど、いざ『夜と霧』を読んでみると、新しい発見が色々ある。実際にアウシュビッツの生活を体験し、生き残った精神科医の記録。

人間を極限状況に追い込む強制収容所の生活。著者によれば、生き残ったのは、生きて行く希望を持ち続けた人。内面の心の平静を保った人。極限状況でも日常性を維持した人。続きを読む
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2011年09月07日

小説書評:伊坂幸太郎『砂漠』名言集他

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砂漠 (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社 2010-06-29

魔王 (講談社文庫) フィッシュストーリー (新潮文庫) 終末のフール (集英社文庫) グラスホッパー (角川文庫) チルドレン (講談社文庫)

by G-Tools , 2011/09/07



『砂漠』文庫版より名言
西嶋「目の前の人間を救えない人が、もっとでかいことで助けられるわけないじゃないですか。歴史なんて糞食らえですよ。目の前の危機を救えばいいじゃないですか。今、目の前で泣いている人を救えない人間がね、明日、世界を救えるわけがないんですよ」(p.110)

西嶋「人間とは、自分とは関係のない不幸な出来事に、くよくよすることですよ」(p.494)続きを読む
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2011年05月10日

3.11後の日本を小説化して欲しい作家〜桐野夏生『IN』

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IN
桐野 夏生
集英社 2009-05-26

ナニカアル 女神記 (新・世界の神話) 残虐記 (新潮文庫) 錆びる心 (文春文庫) 優しいおとな

by G-Tools , 2011/05/10



海外書籍で日本文学のベストセラーといえば、村上春樹と桐野夏生の二人が定番。二人には、3.11後の日本を小説にしてもらいたい。特に桐野夏生は、どろっとした生々しい感情で、歴史的経験を小説化してくれるんじゃないかと思える。

桐野夏生は、『OUT』などの出世作を担当していた編集者と不倫関係にあった。編集者との不倫を作家自らが暴露した作品『IN』は、出版業界内で注目を集めた。続きを読む
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2011年04月30日

3.11の歴史的体験を書いて欲しい作家〜高村薫『レディ・ジョーカー』

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レディ・ジョーカー〈上〉 (新潮文庫)
高村 薫
新潮社 2010-03

レディ・ジョーカー〈下〉 (新潮文庫) レディ・ジョーカー〈中〉 (新潮文庫) 照柿(上) (講談社文庫) 照柿(下) (講談社文庫) マークスの山(上) 講談社文庫

by G-Tools , 2011/04/30



東日本大震災、地震と津波と原発事故の同時連鎖という歴史的体験を、誰か優れた作家が文学作品にしてくれないかなと思う。フクシマは海外の人に、チェルノブイリ同等の原発事故と受け取られている。日本で何が起きたのか、政府と巨大企業と学者とマスコミと、当事者たちの間にどのような齟齬、不条理があったのか、文章にまとめれば、世界的な注目を集めると思える。原発事故をめぐる不条理は、日本社会の問題の縮図なのだから、これを世に広めて、事態の改善を迫るのが得策だ。

現在はネット社会だから、誰か小説家が事件をまとめる前に、当事者が文章をブログやツイッターやSNSで発表するし、YouTubeに動画は出るし、情報はハイスピードで流通している。それでも、この歴史的体験を小説にして欲しい日本の作家といえば、村上春樹、桐野夏生、高村薫などが思いつく。続きを読む
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2011年03月02日

書評:猪瀬直樹『マガジン青春譜―川端康成と大宅壮一 』

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マガジン青春譜―川端康成と大宅壮一 (文春文庫)
猪瀬 直樹
文藝春秋 2004-09

ペルソナ―三島由紀夫伝 (文春文庫) ピカレスク 太宰治伝 (文春文庫) こころの王国―菊池寛と文藝春秋の誕生 (文春文庫) 日本国の研究 (文春文庫) 二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか?―人口減少社会の成長戦略 (文春文庫)

by G-Tools , 2011/03/02



『マガジン青春譜―川端康成と大宅壮一』は、猪瀬直樹による日本近代文学評伝。川端康成、大宅壮一、芥川龍之介、菊池寛等を中心に、明治、大正の近代文学史がリアルに描かれる。続きを読む
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2011年02月26日

書評:猪瀬直樹『ペルソナ―三島由紀夫伝』

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ペルソナ―三島由紀夫伝 (文春文庫)
猪瀬 直樹
文藝春秋 1999-11

ピカレスク 太宰治伝 (文春文庫) 日本国の研究 (文春文庫) 東京の副知事になってみたら (小学館101新書) ジミーの誕生日 アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」 昭和16年夏の敗戦 (中公文庫)

by G-Tools , 2011/02/26



『ペルソナ―三島由紀夫伝』は、猪瀬直樹による三島由紀夫の評伝。別に三島のファンじゃないけど、同じ著者の『ピカレスク―太宰治伝』が面白かったので購読。

三島由紀夫は、天才作家だと神秘化されて語られることが多い。この評伝では、天才という神秘の仮面が剥ぎ取られている。売れるために苦しんだ作家三島由紀夫の素顔がリアルに綴られる。続きを読む
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2011年01月17日

書評:猪瀬直樹『ピカレスク 太宰治伝』

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ピカレスク 太宰治伝 (文春文庫)
猪瀬 直樹
文藝春秋 2007-03

ペルソナ―三島由紀夫伝 (文春文庫) 桜桃とキリスト―もう一つの太宰治伝 (文春文庫) 回想の太宰治 (講談社文芸文庫 つH 1) 東京の副知事になってみたら (小学館101新書) 辻音楽師の唄―もう一つの太宰治伝 (文春文庫)

by G-Tools , 2011/01/17



猪瀬直樹をテレビでよく見ていたけど、本を買おうとは思わなかった。『思想地図β』東京都条例・非実在青少年の問題をめぐる東浩紀、村上隆、猪瀬直樹の巻頭座談会を読んで、猪瀬直樹の本を読んでみようと思った。というわけで、発売当時から気になっていた「ピカレスク 太宰治伝」を購読した。

太宰治は高校の頃、『人間失格』と『走れメロス』を読んだだけ。お笑い芸人にまで人気のある作家となれば、へそ曲がり根性で読む気がしなくなる。太宰治の文章は、認知のゆがみが顕著にあらわれているとも言われる。中原昌也やヘンリー・ミラーや菊地成孔の著作を読むと、彼らの文体から影響を受けて、読書中全身痛くなっていた。太宰を読んでも、多分影響を受けて全身痛くなって自殺したくなるだろうから、読むのは辞めておこうと思っていた。しかし、『ピカレスク 太宰治伝』を読んで、太宰を読もうと思った。続きを読む
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2010年12月03日

書評:トルツ『ぼくを創るすべての要素のほんの一部』(海外文学)より名言、名文他

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ぼくを創るすべての要素のほんの一部
スティーヴ トルツ 宇丹 貴代実
武田ランダムハウスジャパン 2009-06-18

通話 (EXLIBRIS) 学問 生きて、語り伝える バベットの晩餐会 (ちくま文庫) 日の名残り (ハヤカワepi文庫)

by G-Tools , 2010/12/03



『ぼくを創るすべての要素のほんの一部』は、オーストラリア出身の作家スティーブ・トルツのデビュー作にしてブッカー賞、ガーディアン賞最終候補作。はっきりいって21世紀に書かれた世界文学の中では一番すごいというか、現代文学好きなら読む価値あると思うおすすめの一冊。

高橋源一郎が推薦文を寄せている小説って、たいてい難解すぎ、前衛すぎで面白くないんだけど(笑)、これは例外的に面白い。面白くかつ哲学的というか文学的というか、ああ世界文学好きでよかったなと思える重量級の小説。ピンチョン、リチャード・パワーズ好きなら必須。かつピンチョンやパワーズより面白いし。文学の価値はネット化する情報社会の中で相対的に下がる一方だけど、これならありかなというかまだまだ存続意義あるなと思える小説。続きを読む
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2010年12月02日

書評:舞城王太郎『みんな元気。』より名言・名文他

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みんな元気。 (新潮文庫)
舞城 王太郎
新潮社 2007-05

スクールアタック・シンドローム (新潮文庫) 熊の場所 (講談社文庫) 好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫) 阿修羅ガール (新潮文庫) 山ん中の獅見朋成雄 (講談社文庫)

by G-Tools , 2010/12/02



『みんな元気。』は舞城王太郎の短編小説集。文庫版は、単行本と収録作品が異なるそう。さて、僕は日本現代文学の中で、今一番舞城王太郎に萌えています。村上春樹とか村上龍とか阿部和重とかは売れている(阿部和重は微妙だけど)から教養として読んでいるという感じ。中原昌也は好きだけど、読むと影響で、仕事中すごい体が痛くなるし、精神病的症状、絶望状態が現れるから、正直大好きでもあまり読みたくない(笑)。

舞城は残酷表現もあるけど、ある種の理想とか正しさとか、理想も正しさも成立しえないこんな時代に志向しているから、読んでいて体が痛くなることはない。だから好き。そんな生理的理由で小説の好き嫌い決めていいのかという問題もあるけど、今日も舞城推します。というわけで、『みんな元気。』文庫版から名言、名文をお届けします。続きを読む
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2010年11月29日

書評:舞城王太郎『イキルキス』より名言・名文他

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イキルキス
舞城 王太郎
講談社 2010-08-17

獣の樹 (講談社ノベルス) NECK (講談社文庫) IN★POCKET 2010年 7月号 魔界探偵 冥王星O デッドドールのダブルD (講談社ノベルス) 魔界探偵 冥王星O ジャンクションのJ (講談社ノベルス)

by G-Tools , 2010/11/29



『イキルキス』は2010年に講談社から出版された舞城王太郎の短編小説集。まず手始めに作品から何個か、印象的な名言、名文を引用します。

表題作「イキルキス」より
『物語には神秘的なキスとして生をもたらすキスと死をもたらすキスがある。僕が八木としたあのちゅうが生きるキスだったりするんだろうか?それを僕は無意識的に知っていて、だからあそこで無理矢理にでも頑張ったのだろうか?それともやはり性への衝動に駆られただけで、でもたまたまそれが上手く<<世界の文脈>>にはまったのだろうか?』(p105-106)続きを読む
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2010年11月26日

書評:舞城王太郎『ビッチマグネット』名言・名文つき

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ビッチマグネット
舞城 王太郎
新潮社 2009-11-27

獣の樹 (講談社ノベルス) イキルキス NECK (講談社文庫) ディスコ探偵水曜日〈下〉 ディスコ探偵水曜日〈上〉

by G-Tools , 2010/11/26



『ビッチマグネット』は、舞城王太郎の小説。2009年発表。2009年下半期芥川賞候補作。舞城にとっては、2004年上半期『好き好き大好き超愛してる。』に続く2度目の芥川賞候補作となった。2004年はモブノリオの『介護入門』に獲られたし、2009年は津村記久子の『ポトスライムの舟』に獲られてる。芥川賞なんか何の権威も威信もありがたみもないことネットの時代では丸わかりだけど、やっぱり舞城が芥川賞取れないと悔しかったりする。けど、村上春樹みたいに舞城は絶対獲れないよねと思うし。異端だから。

異端だけど、扱う題材はいかにも日本近代文学の伝統に沿ったもの。家族なんて崩壊して無縁社会化してるけど、それでも舞城は近代文学の伝統にそって近代家族(あとは自我、アイデンティティ、正義の問題など)を描く。というわけで、現代日本文学の希望かつ絶望『ビッチマグネット』より名言、名文をお届けします。

『思うに、自分の内なるトラウマを発見することが自分を苦しみから解き放つ……というのはその構造自体が物語で、それを信じている自分とはその物語の登場人物なのだ。だからその語り口にリアリティがあり、それを信じさえすれば、主人公は文脈を阻害されないままある意味予定された通りの、願っている通りのエンディングへと辿り着く。物語としての治療法を読者としての患者が信じれば、物語は読者を取り込み、癒すだろう。物語というのはそういうふうに人間に働きかけることもあるのだ。物理とか化学とか数学とかの分野について私はよく判ってないけど、あらゆる<<説>>や<<概念>>が物語でないとも限らないのだ。物語を信じることで社会も人生も成り立っているなら、あはは、なんとも呪術的な世界じゃない?』(p.56-57)続きを読む
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2010年11月25日

書評:百田尚樹『永遠の0(ゼロ)』より名文・名言他

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永遠の0 (講談社文庫)
百田 尚樹
講談社 2009-07-15

ボックス! 上 ボックス! 下 阪急電車 (幻冬舎文庫) 聖夜の贈り物 永遠の0(1) (アクションコミックス)

by G-Tools , 2010/11/25



『永遠の0(ゼロ)』は神風特別攻撃隊をテーマにした小説。文庫本売り場にやたら積まれているし、題名からどんな小説かわからなかったので気になっていた。たまにはベストセラーでも読もうかと思って購入。泣けると宣伝文句に書いてある。こういう小説の形式ってなんか嫌いだし、そう帯に書かれると、絶対泣かないでおこうと思ってしまう性質だけど、特攻隊の若者が地元に帰って、太平洋戦争中に結婚したシーンでは、じんわり泣けてきた。二人が結ばれてよかったねなんて、そのシーンだけ抜き出すと安っぽい話になるから抜き出さないけど(伏線の積み重ねで涙腺刺激されたわけだし)、以下作中より印象的だった箇所をお届けします。

(谷川の語り)
『米軍と日本軍の発想はまったく違うものだったのだと知った。「VTヒューズ」は言ってみれば防御兵器だ。敵の攻撃からいかに味方を守るかという兵器だ。日本軍にはまったくない発想だ。日本軍はいかに敵を攻撃するかばかりを考えて兵器を作っていた。(…)思想が根本から違っていたのだ。日本軍には最初から徹底した人命軽視の思想が貫かれていた。そしてこれがのちの特攻につながっていったに違いない』(p.326)続きを読む
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2010年11月23日

書評:川上未映子『ヘヴン』〜文学といじめ〜可能性を守るのか開くのか

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ヘヴン
川上 未映子
講談社 2009-09-02

乳と卵(らん) (文春文庫) そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります (講談社文庫) わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫) 先端で、さすわさされるわそらええわ 世界クッキー

by G-Tools , 2010/11/23



『ヘヴン』は、『乳と卵』で芥川賞を受賞した川上未映子による初の長編小説。学校におけるいじめをテーマにしており、2009年に発表された純文学では高評価。

『乳と卵』の時は、そんな盛り上がれなかった。ミュージシャンで、詩人で、小説家って、椎名林檎の出来損ないみたいな感じがして、写真映りのよい女性の小説家に賞を与えて、売上拡大をはかるいつもの商法かと思っていた。『ヘヴン』は、それまでの作品のような女性1人称の長文口語体ではなく、「僕」の1人称で簡潔に綴られる小説である。わかりやすく、読みやすい文章だけれど、村上春樹の文章よりは文学的。川上未映子のことを誤解していたと思った。最初から最後まで完璧な文章が続く。「純文学とはどういうものか?」という問題に対する模範解答のような小説。純文学という誤解含みの表現形式に対する、ある種の規範を示そうとしたかのような野心作だ。続きを読む
タグ:書評 小説 文学
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2010年11月21日

書評:村上龍『歌うクジラ』下巻〜総合格闘技場で戦うノンジャンル小説の現在形

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歌うクジラ 下
村上 龍
講談社 2010-10-21

歌うクジラ 上 案外、買い物好き (幻冬舎文庫) 人間小唄 (100周年書き下ろし) どつぼ超然 夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです

by G-Tools , 2010/11/21



『歌うクジラ』下巻読了。一言で言うと、大変マッチョな小説。マッチョな主義主張がたくさん描写されるけれど、近代的マッチョイズムを批判する小説かもしれない。女性差別的、移民差別的、一部のエリートクラスによる社会管理主義の誤謬が描写される。村上龍は『カンブリア宮殿』で経営者たちにこびへつらったインタビューをしている。あんなこびへつらってたら、もう昔みたいな小説書けなくなるんじゃないかと思っていたが、村上龍はやってくれた。毎週テレビに出演して経営者相手に良識者ぶっている中、こんな危ない小説を書いていてくれたことが嬉しい。

全てが効率に基づいて管理される未来の日本社会で、エリート層の間に幼児性犯罪が頻発する。人間が文化を作ったのは何故かという村上龍おなじみの議論が、『歌うクジラ』でも展開される。人間は他の動物と違って発情期がない。故にいつでもセックスできる。文化、ファッション、言語、イメージ、マスメディア、コミュニケーションは、発情期の代替物として機能する。つまり、発情期を失った人間は、文化に触発されて、セックスをする。続きを読む
タグ:書評 村上龍
posted by 野尻有希 at 16:33 | TrackBack(0) | 読書論(小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月17日

書評:村上龍『歌うクジラ・上巻』〜文学の可能性を開く総合格闘技的小説

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歌うクジラ 上
村上 龍
講談社 2010-10-21

歌うクジラ 下 案外、買い物好き (幻冬舎文庫) タイニーストーリーズ 人間小唄 (100周年書き下ろし) どつぼ超然

by G-Tools , 2010/11/17



『歌うクジラ』は、2005年『半島を出よ』以来久々となる村上龍の長編小説。電子書籍発売後、講談社から紙の書籍として単行本上下巻発売。

村上龍や村上春樹の新作小説が発売されると、とりあえず買って読んでおかなきゃなと思う。「同時代の生きる教養として、人気と実力のある小説家の新作を読む必要がある」こんな仮説、ネット全盛の時代では、誇大妄想の誤謬に過ぎないと思えてくる。プロの批評家による小難しい書評よりも、ネット上のユーザーレビューの方が信頼おけるとされ、あらゆるジャンルの出版物が統一価値基準で総合格闘技のごとく人気を争う現代では、村上龍の新作小説なんて、別にたいした人数読んでないことは、目に見えてわかる。小説なんかよりも『ワンピース』や『バガボンド』などの方が人気も影響力もあるとわかったネットの時代に、それでも『歌うクジラ』を読む時代錯誤。

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2010年11月12日

書評:舞城王太郎『獣の樹』より名文・名言集

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獣の樹 (講談社ノベルス)
舞城 王太郎
講談社 2010-07-07

NECK (講談社文庫) イキルキス IN★POCKET 2010年 7月号 魔界探偵 冥王星O デッドドールのダブルD (講談社ノベルス) ビッチマグネット

by G-Tools , 2010/11/12



今日は2010年に発表された舞城王太郎『獣の樹』(講談社100周年記念作)より、名文・名言をお届けします。僕は舞城推してますが、講談社も推してるようです。

『僕は思う。こういう持ち前のサーヴィス精神が人間を悪に引きずり込んだりするのだ。似たようなサーヴィス精神を持っているということが僕が人間であることの証左になったりするだろうか?』(p.48)続きを読む
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2010年11月11日

書評:舞城王太郎『阿修羅ガール』(文庫版)より名文・名言集

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阿修羅ガール (新潮文庫)
舞城 王太郎
新潮社 2005-04

好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫) スクールアタック・シンドローム (新潮文庫) 煙か土か食い物 (講談社文庫) 熊の場所 (講談社文庫) 世界は密室でできている。 (講談社文庫)

by G-Tools , 2010/11/11



今日は舞城王太郎『阿修羅ガール』(文庫版)より名文・名言をお届けします。

『人間の性欲は、ときには、子供の死の悲しみに勝る。人間の性欲は、ときには、三つ子ちゃんの死をセックスの高揚のために利用するくらいに強か(したたか)なのだ。最悪だ。人間の性欲なんて、ホント最悪。でもその最悪のものから、私たちは生まれてくるんだ。その最悪のものがあるからこそ、私たちは発生するんだ』(p.113)続きを読む
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