2014年03月22日

小熊英二「社会を変えるには」(講談社新書)より印象的な箇所のまとめ

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社会を変えるには (講談社現代新書)
小熊 英二
講談社 2012-08-17

私たちはいまどこにいるのか 小熊英二時評集 平成史【増補新版】 (河出ブックス) 増補改訂 日本という国 (よりみちパン!セ) ヒーローを待っていても世界は変わらない 〈民主〉と〈愛国〉―戦後日本のナショナリズムと公共性

by G-Tools , 2014/03/22



久々に現代思想関係の記事更新。小熊英二「社会を変えるには」は、500ページ以上ある分厚い新書である。印象的な箇所のまとめ。

<第1章日本社会は今どこにいるのか>
先進国では製造業が減り、情報産業やITをもとに投資する金融業が増大。また宅配業者やデータ入力業者など新種の下請けの仕事が増える。ビジネス街で働く中核エリート層を支えるためには、単純事務労働員やビル清掃員、コンビニや外食産業の要員が必要。これらは「マックジョブ」と言われる短期労働者の職になる。一人の中核エリートを支えるには、五人の周辺労働者が必要とも言われ、これらは海外に移転できない。逆に言うと、先進国の都市であっても、多数派は低所得層になり、格差拡大は進む。続きを読む
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2012年12月02日

書評:『僕たちはガンダムのジムである』〜僕たちはZガンダムのネモであるなら、エヴァンゲリオンのパイロットであるなら、どうなるか仮説検証

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僕たちはガンダムのジムである
常見陽平
ヴィレッジブックス 2012-09-28

なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術 (ソフトバンク新書) 「意識高い系」という病~ソーシャル時代にはびこるバカヤロー 女子と就活――20代からの「就・妊・婚」講座 (中公新書ラクレ) 仏の心で鬼になれ。:「上司道」を極める20の言葉 女子のキャリア: 〈男社会〉のしくみ、教えます (ちくまプリマー新書)

by G-Tools , 2012/12/02



元一橋大学プロレス研究会の人が書いた本。 著者から「僕たちはガンダムのジムである」と喝破されると、いやいやそれでも自分はガンダムだろうと反発したくなる。

ここで立ち止まって、よく考えてみよう。「僕たちはZガンダムのネモである」と言われたなら、ネモなら量産型だけどデザイン格好いいからいいや、と納得するかもしれない。

もし「僕たちはエヴァンゲリオンのパイロットである」と言われたとしたら、いやいやエヴァンゲリオンなんてあんな兵器乗りたくないし、ネルフの一員でいいし、何ならシンジの学校に通う名もない生徒でいいし、と思えてくる。続きを読む
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2012年10月02日

書評:『AKB48白熱論争』小林よしのり、中森明夫、宇野常寛、濱野智史〜ソーシャルメディア時代のアイドルとファンの新しい関係性

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AKB48白熱論争 (幻冬舎新書)
小林 よしのり 中森 明夫 宇野 常寛 濱野 智史
幻冬舎 2012-08-26

意気地なしマスカレード (SG+DVD) (Type-C) 意気地なしマスカレード (SG+DVD) (Type-A) 意気地なしマスカレード (SG+DVD) (Type-B) AKB48 じゃんけん大会公式ガイドブック2012 (光文社ブックス 103) BUBKA (ブブカ) 2012年 10月号 [雑誌]

by G-Tools , 2012/10/02



恋愛禁止のタブーを起こした指原がHKT48に左遷された時、『ゴーマニズム宣言』の著者、小林よしのりがすごい反応しているのをツイッターまとめサイトで見つけて、笑った。小林よしのりがAKBファンだと知り、しかも最近、宇野常寛などとAKBについて対談している新書を出していると知って、息抜きのつもりで買ってみた。結果、とても刺激的な内容の本とめぐり合えた。

(印象的な箇所)
<ソーシャルメディア時代のアイドルAKB>
・AKBはマスメディアに頼らず、ソーシャルメディアを駆使して、ファンとアイドルの新しい関係を作った。
・AKBは、おにゃんこやモーニング娘。に似ていると言われるが、ガチの度合いが全然違う。
・おにゃんこもモー娘も、所詮フェイク・ドキュメンタリー。楽屋の生の様子を視聴者に見せているようでいて、製作者側が何を見せるか、繊細にコントロールしていた。
・AKBは、もうフェイクじゃない。ガチの人気競争をファンに見せている。毎日劇場で公演して、女子たちにGoogle+やブログを好き勝手に更新させることで、アイドルの日常をソーシャルメディア上にだだ漏れ状態にしている。
・あとはオタたちが、ソーシャルメディアにその感想を吐き出し、勝手に盛り上がっていく。テレビ前提のアイドルとは、ファンとアイドルの関係性が全く違う。続きを読む
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2012年09月17日

書評:東浩紀編『日本2.0 思想地図βvol.3』〜日本を新しくするための新しい思想、文化を求めて

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日本2.0 思想地図β vol.3
東 浩紀 村上 隆 津田 大介 高橋 源一郎 梅原 猛 椹木 野衣 常岡 浩介 志倉 千代丸 福嶋 麻衣子 市川 真人 楠 正憲 境 真良 白田 秀彰 西田 亮介 藤村 龍至 千葉 雅也 伊藤 剛 新津保 建秀
ゲンロン 2012-07-17

思想地図β vol.2 震災以後 思想地図β vol.1 都市と消費とディズニーの夢  ショッピングモーライゼーションの時代 (oneテーマ21) 独立国家のつくりかた (講談社現代新書) コミュニケーションのアーキテクチャを設計する―藤村龍至×山崎亮対談集 (建築文化シナジー)

by G-Tools , 2012/09/17



東浩紀編『日本2.0 思想地図βvol.3』は、「アキハバラ3000−サイパン」という特集で始まる。東浩紀、志倉千代丸、もふくちゃんこと福嶋麻衣子の3人が未来の秋葉原の仮想キャラクターを演じるコスプレグラビアの後に、秋葉原について3人が語る座談会が続く。

前号『思想地図βvol.2』は、震災後を意識し、アニメ、マンガ等のオタク文化に関する記事は影を潜め、社会問題中心の「まじめ」な紙面構成だった。今回の紙面には、秋葉原文化、憲法問題、ジャーナリズム、アート、日本の中東外交、ギャル男、クイズなど、多様なテーマの記事が並ぶ。本書全体を貫くテーマは、震災後の日本はどのような方向に向かうべきか。日本をver2.0にバージョンアップさせるための視点が、雑誌化されている。続きを読む
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2012年07月22日

書評:『話し言葉で読める「西郷南洲翁遺訓」』より名言



西郷隆盛の談話集「西郷南洲翁遺訓」を現代口語訳にしたもの。JALを立て直した稲盛和夫さんが、西郷さんを敬愛していたので、その流れで本書を手に取ったが、すばらしかった。

<印象的な言葉>
(仕事の理想)
・どんな小さなことでも誠心誠意、目の前の仕事に取り組むこと。策謀を用いてはならない。策謀を用いれば、後に報復されるわずらいが生じる。
・喜びも楽しみも、理想の中にあってこそ。理想を忘れて享楽を追い求めるだけになったら、国は滅びる。
・人は己に克つことによって最後に成功を収め、己を愛し過ぎることによって、最後には失敗する。
・ある程度成功すると、賞賛されるようになる。すると、純粋な理想を忘れ、傲慢で尊大になり、自分を愛しすぎるようになり、失敗する危険が生じる。続きを読む
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2012年06月21日

書評:『ジョージ・ポットマンの平成史』平成時代のサブカルと経済社会状況の関係を分析

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ジョージ・ポットマンの平成史
ジョージ・ポットマン 高橋弘樹 (日本語版著者) 伊藤正宏 (日本語版著者)
大和書房 2012-04-25

ジョージ・ポットマンの平成史 vol.2 [DVD] ジョージ・ポットマンの平成史 vol.1 [DVD] 孤独のグルメ DVD-BOX 歴史が面白くなる 東大のディープな日本史 ユリイカ2012年5月号 特集=テレビドラマの脚本家たち

by G-Tools , 2012/06/21



テレビ東京で深夜放送されていた『カノッサの屈辱』、『お厚いのがお好き?』を彷彿とさせるサブカル教養お笑い擬似ドキュメント番組のまとめ本。平成という特異な時代をサブカルチャーから分析する。ファミコン史、マンガの汗史、人妻史、童貞史、友達いないと不安史、路チュー史などのサブカル事象分析によって導かれるのは、長期的経済不況が、若者文化に多大な影響を及ぼしているという点である。

<マンガの汗史>
高度成長期のスポコンマンガは、主人公たちがたくさん汗をかいていたが、最近人気のスポーツマンガでは、どんなに激しい運動をしていても、登場人物は汗をかいていないという。何故汗が減ったのか。肉食主流になって、日本人の体臭が臭くなったことも一因だが、汗をかいてがんばっても、成功する確率が減少した、つまり努力しても報われない経済・社会構造になったことがその原因だと分析される。ちょっとした発想の転換やチャンスを掴んだ人が大儲けする一方、頑張る人はいくら頑張っても報われない。これでは汗の価値がなくなる。続きを読む
タグ:書評
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2012年06月05日

書評:梅原猛・稲盛和夫『近代文明はなぜ限界なのか (PHP文庫)』〜ソーシャルネットワーク社会における欲望とモラルの考察

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近代文明はなぜ限界なのか (PHP文庫)
梅原 猛 稲盛和夫
PHP研究所 2011-12-03

日本の深層 縄文・蝦夷文化を探る (集英社文庫) 梅原猛の授業 道徳 (朝日文庫 う 10-3) 人類哲学へ 梅原猛の授業 仏教 (朝日文庫) 「利他」 人は人のために生きる

by G-Tools , 2012/06/05



哲学者と経営者による対談集。

<印象的な箇所>
・合理性と効率性を重視した近代文明は限界に来ている。近代文明の元となったギリシア、ユダヤ文明は、合理性を重んじた。それ以前にあったエジプト文明は自然崇拝で多神教的だった。合理性と効率性、成長と発展の直線的追求により、地球環境はダメージを受けた。これからは、自然や他者を支配しようとするのでなく、自然や他者と調和することを願い、生命とエネルギーの成長発展より、その良質な循環を願う循環型社会に立ち戻るべき。
・当たり前のよいことを守るようにする。戦争教育の反省から、戦後、道徳教育がされなくなった。当たり前のよいことをできない人が多くなった。
・罪は内面的、恥は外面的とされる。罪の意識に比べて恥の意識は劣っていると見られてきたが、恥の意識がなくなると、欲望が肥大化する。
・何故勉強するのか。将来お金持ちになる=将来大きな欲望をかなえるために勉強するのなら、欲望の抑えがない。勉強して将来重要な立場に着いた時、平気で不祥事を犯す人になる。続きを読む
タグ:書評
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2012年04月08日

書評:萱野稔人『新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか』



他の日本の論者とは一線を画する国家論。

<印象的な箇所のまとめ>
・ネーション(国民)とナショナリズムと国民国家は異なる。
・ネーションとは人間集団の単位。同じ国民なら、あなたと私は同一だと想像して生まれる想像の共同体。
・ナショナリズムとは、同一民族が一つの国家を作るべきと考える主義主張、政治的原理。政治的単位と民族的単位は同じであるべきと考える。
・国民国家とは、ネーション(国民)を集団単位とする国家の一つの形態である。
・日本の知識人の間では、想像の共同体であるネーションと国民国家を混同し、国民国家は想像の産物だと批判する議論が多いが、国民国家は実在する合理的機構。ネーションのような想像の産物ではない。続きを読む
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2012年03月29日

書評:東浩紀編『メディアを語る(別冊思想地図βニコ生対談本vol.2)』〜匿名サイトの世界的隆盛について

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メディアを語る (別冊思想地図β ニコ生対談本シリーズ#2)
川上 量生 宇川 直宏 濱野 智史 東 浩紀
コンテクチュアズ 2012-03-15

「当事者」の時代 (光文社新書) 震災から語る――別冊思想地図β ニコ生対談本シリーズ1 希望論―2010年代の文化と社会 (NHKブックス No.1171) 次世代コミュニケーションプランニング 情報の呼吸法 (アイデアインク)

by G-Tools , 2012/03/28



3本対談が収められている中で、東浩紀と濱野智史の対談『アーキテクチャの生態系』とその後が面白かった。

・日本でしか力を持つことはないだろうと思われていた2ちゃんねる、ニコニコ動画的な巨大匿名サービス、WikiLeasks(ウィキリークス)、Anonymous(アノニマス)、4chan(4ちゃん)などが、ここ最近海外でも力を持ち始めている。
・WikiLeaksは匿名の内部告発サイトであり、ネタで盛り上がる2ちゃんねるとは異なる。しかし、濱野のアサンジに対する第一印象は、「やっと向こうにもひろゆきみたいなやつが出てきた」というものだった。続きを読む
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2012年03月26日

書評:NHKEテレ「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」制作班『徹底討論!ニッポンのジレンマ[絶望の時代の希望論]』〜宇野常寛と飯田泰之の意見対立に注目〜

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徹底討論!ニッポンのジレンマ
NHKEテレ「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」制作班
祥伝社 2012-03-03

希望論―2010年代の文化と社会 (NHKブックス No.1171) 絶望の国の幸福な若者たち リトル・ピープルの時代 暇と退屈の倫理学 一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル

by G-Tools , 2012/03/25



NHK教育で元旦深夜に放送された討論番組の書籍版。文芸批評家宇野常寛とエコノミスト飯田泰之の意見対立が印象的だった。

宇野は、日本のOSを時代変化にあわせてアップデートしようと提案するが、宇野の発言の要所要所で飯田が噛み付く。飯田は、「構造改革」、「グローバリゼーション」など一見学術的だが、その実人々によって解釈が異なり、生産性のない曖昧な言葉をマジックワードとして批判する。続きを読む
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2012年01月16日

書評:ペック『愛すること、生きること』

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愛すること、生きること 全訳『愛と心理療法』
M・スコット・ペック 氏原 寛
創元社 2010-08-28

愛するということ The Road Less Traveled, Timeless Edition: A New Psychology of Love, Traditional Values and Spiritual Growth 死後の世界へ 文庫 平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学 (草思社文庫) フレンドリー・スノー―心に舞い降りた雪の物語

by G-Tools , 2012/01/16



心理療法の本として評価の高い『愛と心理療法』の全訳版。

・問題と苦しみを回避する傾向こそ、精神疾患の原因である。
・楽しみを後回しにして、苦しみを先に経験することが必要。
・楽しみを後に回す資質、自律能力は、だいたい幼少期に身につける。
・親が自律と自制心のモデルとなるより、親が子ども達に愛を示すことの方が、自律心の育成に重要。続きを読む
タグ:書評
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2012年01月09日

書評:菊地成孔+大谷能生『M/D-マイルス・デューイ・デイヴィスV世研究』下巻(河出文庫)

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M/D 下---マイルス・デューイ・デイヴィスV世研究 (河出文庫)
菊地 成孔 大谷 能生
河出書房新社 2011-09-03

M/D 上---マイルス・デューイ・デイヴィスV世研究 (河出文庫) 東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・キーワード編 (文春文庫) 東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・歴史編 (文春文庫) 憂鬱と官能を教えた学校 上---【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史 調律、調性および旋律・和声 (河出文庫 き 3-1) 憂鬱と官能を教えた学校 下---【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史 旋律・和声および律動 (河出文庫 き 3-2)

by G-Tools , 2012/01/09



上巻レビューからの続き。

<1960年代後半>
・アコースティック期の最後、第二次クインテットは、ウェイン・ショーター、ハーピー・ハンコックなど超絶技巧者揃い。ジャズのカルトとしてのマイルス・デイヴィスは、商業化する音楽との接点を失い始める。
・以前は、目の肥えたジャズファンが集まっているライブ会場で、新しい即興を生み出し、受けのよい即興をレコーディングすれば、名盤となっていた。しかし、現代の黒人の若者はジャズではなくソウル、ファンク、ロックを聴く。ブラック・ミュージックの第一人者でいたいマイルスは、保守化し、時代と乖離し始めたジャズファンに失望し始める。マイルス電子化、ファンク化の時代へ。続きを読む
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書評:菊地成孔+大谷能生『M/D-マイルス・デューイ・デイヴィスV世研究』上巻(河出文庫)

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M/D 上---マイルス・デューイ・デイヴィスV世研究 (河出文庫)
菊地 成孔 大谷 能生
河出書房新社 2011-08-05

M/D 下---マイルス・デューイ・デイヴィスV世研究 (河出文庫) 東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・キーワード編 (文春文庫) 東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・歴史編 (文春文庫) 憂鬱と官能を教えた学校 下---【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史 旋律・和声および律動 (河出文庫 き 3-2) 憂鬱と官能を教えた学校 上---【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史 調律、調性および旋律・和声 (河出文庫 き 3-1)

by G-Tools , 2012/01/09



2005年東京大学教養学部で行われたジャズの帝王、マイルス・デイヴィスの講義録。ハードカバー版は出版社が倒産しており希少本、アマゾンでも高価だった。書店で文庫本を見つけたので、早速購入。『憂鬱と官能の学校』、『東京大学のアルバート・アイラー』、『アフロディズニー』彼らの講義録全部好きだった自分にとっては、期待通りの良書でした。以下内容のまとめ。

<誕生から1940年代>
・マイルス・デイヴィスは1926年生まれ、セントルイスで裕福な少年期を送る。白人上流階級同様の豊かな生活は、他の貧しい黒人ジャズメンとは異質の環境だった。
・地元でトランペットを吹いている時、演奏旅行でやってきたチャーリー・パーカーと競演、天才チャーリー・パーカーの演奏に感銘を受ける。
・18歳でニューヨークへ。ジュリアード音楽院に入学。当時のニューヨークは、太平洋戦争最中だが、戦争とは無関係に繁栄していた。マイルスは夜な夜なチャーリー・パーカーとつるみ、バップの演奏家としてキャリアを開始する。続きを読む
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2011年12月27日

哲学書評:東浩紀『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』

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一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル
東 浩紀
講談社 2011-11-22

思想地図β vol.2 リトル・ピープルの時代 愚民社会 暇と退屈の倫理学 社会システム理論: 不透明な社会を捉える知の技法 (リアリティ・プラス)

by G-Tools , 2011/12/26



震災後の日本を特集した『思想地図β』2号が思想誌としては異例の売れ行きを見せている現代思想家? 批評家? 東東浩紀の著書。『一般意志2.0』は、震災前に講談社『本の雑誌』に連載されていた哲学エッセイを一冊にまとめたもの。『思想地図β』は好評だが、個人的にはあずまん異常に保守化しているなと思った。昔のあずまんのテキストがよかった人は、この本がおすすめだ。前書きでも後書きでも、震災後の自分なら、この本を全面的に書き換えているだろうと書かれているが、書き換えられなくてよかったと思う。

民主主義の父の一人とされる思想家ルソーは、『社会契約論』の中で、一般意志という概念を説いた。一般意志とは、人々個人の意志=特殊意志の総体とは異なる。一般意志とは、社会の全員の意見が集まった結果、プラスの意見とマイナスの意見が相殺されて、ちょうどいい具合の総体的意志になった状態をさす。かつて一般意志は、夢物語でしかなかったけれど、グーグル、ツイッターなど情報技術の発達によって、一般意志は、現実化した。著者は、現代の巨大仮想データベースが構築する集合知的な情報集積体を「一般意志2.0」と命名する。続きを読む
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2011年12月26日

哲学書評:國分功一郎『暇と退屈の倫理学』

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暇と退屈の倫理学
國分 功一郎
朝日出版社 2011-10-18

一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル 絶望の国の幸福な若者たち 社会は絶えず夢を見ている 退屈の小さな哲学 (集英社新書) リトル・ピープルの時代

by G-Tools , 2011/12/26



著者はデリダ、ドゥルーズ、ガタリ、フーコーなどフランス現代思想の翻訳に多数関わっている哲学者。各誌の書評で好評、紀伊国屋書店では特集コーナーも組まれていたので購読した。

横軸に暇がある/暇がない。縦軸に退屈している/退屈していないをとると、4つの座標ができるという。

<第一象限>暇がある、退屈している
・暇を楽しむ術がない大衆
・いつも気晴らしを求めている人(パスカルの解釈)
・時間をいつでも有効に使いたいという強迫観念に囚われている人、俗物、自己喪失の状態。(ハイデッガーによる解釈。退屈の第一形式)続きを読む
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2011年09月19日

現代思想書評:東浩紀編『思想地図β vol.2』特集・震災以後〜ゼロ年代の批評からの決別

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思想地図β vol.2
東浩紀 津田大介 和合亮一 藤村龍至 佐々木俊尚 竹熊健太郎 八代嘉美 猪瀬直樹 村上隆 鈴木謙介 福嶋亮大 浅子佳英 石垣のりこ 瀬名秀明 中川恵一 新津保建秀
合同会社コンテクチュアズ 2011-09-01

思想地図β vol.1 リトル・ピープルの時代 現代思想2011年9月臨時増刊号 総特集=緊急復刊 imago 東日本大震災と〈こころ〉のゆくえ 思想地図〈vol.2〉特集・ジェネレーション (NHKブックス別巻) 思想地図〈vol.5〉特集・社会の批評(NHKブックス別巻)

by G-Tools , 2011/09/19



東浩紀編『思想地図β』第2号。寄稿者、座談会出演者は、津田大介、和合亮一、藤村龍至、佐々木俊尚、竹熊健太郎、猪瀬直樹、村上隆、鈴木謙介、福嶋亮大、瀬名秀明など。 『思想地図β』第一号は、非実在青少年の問題などポップカルチャーよりの記事が多かったが、今回もそういうのを期待して買うと裏切られる。

紙面は震災特集。真面目な論壇誌みたく震災、復興、原発といったテーマに対する論考が並ぶ。座談会などところどころで『魔法少女まどか☆マギカ』、『シュタインズ・ゲート』など旬なオタク作品の名前が出てくるが、ポップカルチャー中心ではない。震災によって、日本のポップカルチャーの前提、「豊かさ」は崩壊してしまったという認識が雑誌冒頭に語られる。今号は、ゼロ年代の批評を引っ張ってきた東浩紀によるゼロ年代との決別である。続きを読む
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2011年04月19日

情報革命は原発事故後の日本でも起きている〜『ジョン・キムのハーバード講義 逆パノプティコン社会の到来』

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ウィキリークスからフェイスブック革命まで 逆パノプティコン社会の到来 (ディスカヴァー携書)
ジョン・キム
ディスカヴァー・トゥエンティワン 2011-04-16

サイバースペースはなぜそう呼ばれるか+  東浩紀アーカイブス2 (河出文庫) フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた) キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書) 思想地図β vol.1 ウィキリークス WikiLeaks  アサンジの戦争

by G-Tools , 2011/04/19



『ジョン・キムのハーバード講義 逆パノプティコン社会の到来』では、ウィキリークス、フェイスブックなどの世界的普及によって、社会が変化したと語られる。

社会はどう変化したのか。かつての近代社会では、権力者が国民を監視、統制していた。権力者が国民を見る側で、国民は見られる側だった。ネット社会では、見る―見られるの関係が逆転する。市民一人一人が政府や大企業の活動を常に監視し、何か問題があれば、ネット上で批判する社会が到来した。著者はこの変化を「逆パノプティコン社会の到来」だと指摘する。続きを読む
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2011年04月17日

3.11後の日本の状況は、9.11後のアメリカの状況と酷似している〜堤未果『社会の真実の見つけかた』読後の感想

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社会の真実の見つけかた (岩波ジュニア新書)
堤 未果
岩波書店 2011-02-19

世界について (岩波ジュニア新書) もうひとつの核なき世界 真のCHANGEは日本が起こす アメリカから<自由>が消える (扶桑社新書) 報道が教えてくれないアメリカ弱者革命 (新潮文庫) 正しいパンツのたたみ方――新しい家庭科勉強法 (岩波ジュニア新書)

by G-Tools , 2011/04/17



日本の3.11は、アメリカの9.11並みの衝撃を世界に与えたと言われる。アジアといえば中国、韓国、東南アジアの新興国など。アジアの中に日本は含まれなくなっていた。もう終わった国として、アジアからも除外されていた日本が、3.11以後、突然世界中のテレビや新聞で連日トップニュース扱いになった。こんな状況で、『ルポ貧困大国アメリカ』の著者、堤未果の新著『社会の真実の見つけかた』を読んだ。

この本は、2011年2月に初版発行、当然、震災や福島原発事故の報道については触れられていない。しかし、9.11後のアメリカについて書かれた第1章「戦争の作り方―3つの簡単なステップ―」が、3.11後の日本の状況に酷似していた。続きを読む
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2011年03月06日

書評:『超訳ニーチェの言葉』

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超訳 ニーチェの言葉
白取 春彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン 2010-01-12

ニーチェ、愛の言葉 美女をつくる60の条件 生きるための哲学 ニーチェ[超]入門 幸せを呼ぶ孤独力―“淋しさ”を「孤独力」に変える人の共通点 自分の心をみつけるゲーテの言葉 (コスモ文庫) もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

by G-Tools , 2011/03/06



100万部突破の本。売れている本だし、コンビ二にもおかれているので購入。想像通り、ニーチェの毒気とか難しい部分は、全て毒抜きされていた。キリスト教やプラトン哲学を猛烈批判している箇所はなし。ニーチェが、ごく普通の自己啓発の作家と同じような感じになっていた。続きを読む
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2011年01月30日

哲学書評:仲正昌樹『ポストモダンの正義論「右翼/左翼」の衰退とこれから』



現代では、右翼も左翼も弱体化している。何故か。「社会はより良くなる」という「進歩」の理想が失われたからであるとする書。

例えば、マルクス主義は、ヘーゲルの歴史哲学同様、社会は発展的に未来に向かってよくなっていくとした。もし暗黒の未来が見えるならば、マルクス主義者が力をあわせて、世界同時革命を推進していけばよいわけである。マルクス主義者でなくとも、知識人、文化人たちは、社会の進化発展を信じていた。その理想も、冷戦崩壊後、完全についえる。続きを読む
posted by 野尻有希 at 18:39 | TrackBack(1) | 読書論(哲学・現代思想) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする